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WSOPジャーナル

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WSOPジャーナル第14号

 

WSOPジャーナル第13号

月刊 『産業と教育』10月号 ”専門教育の充実に向けて” 掲載文

2022年8月17日

希望進路の決定と実現の支援のために

―奨学金等に係る情報の早期の提供・入手の重要性―

NPO法人若者の進学応援プロジェクト     副代表理事 月岡 英人

はじめに 

これまでの連載の中で、高等学校卒業後の進路や保護者世代の進路との違い、修学支援新制度に係る申込み時や採用後の注意点、給付奨学金や授業料等の減免の額などについて説明してきました。

進学する場合、学校納付金など様々な費用が必要となります。このため、奨学金など様々な支援策が国、地方公共団体、学校等によって提供されており、それをよく知り、利活用することが重要です。本連載もそのことをお伝えすることが目的です。

本号では、進学する場合に入学前に必要となる費用とその支払い時期を説明し、教育未来創造会議の「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」(注1)でも提言されている早期からの情報提供・入手の重要性などについて取り上げます。

 

1.入学前に必要となる費用とその時期

 

(1)受験から入学前までに必要となる費用

  高校教員向けの「おしえて!将来のお金のこと(2022年度版)」(日本学生支援機構)によれば、大学の場合で「100万~200万円というまとまったお金が必要です」とされています。

これを通学方法別・設置者別にみると下表のとおりで、学校納付金は大きな割合を占めています。仮に、入学しなかった学校への納付金を除いたとしても大きな割合であることは変わりません。

 

表1  受験から入学前までに必要となる金額 (千円)

 

自宅通学

自宅外通学(下宿)

私立大学

国立大学

私立大学

国立大学

合計

1,800

1,415

2464

2,099

うち学校納付金(1)

956

645

988

648

うち学校納付金(2)

296

281

299

277

(注1)金額は100円の位を四捨五入した

(注2)学校納付金(1)は入学した大学への納付金、学校納付金(2)は入学しなかった大学への納付金

 

若者の進学応援プロジェクトでも、「入試に合格したが学校に支払う費用の準備がまだできていない」という話を聞くことがあります。小さな額ではないので直ぐに用意することは難しいと思います。

ですから、必要となる費用については、金額とともに支払時期を知っておくことが重要です。

(2)学校納付金の支払い時期

  支払いの時期はいつかというと、一般に入学者選抜に合格して入学手続きをする時です。

入試シーズンは1月の大学入学共通テストから始まるという印象がありますが、これはいわゆる「一般選抜」と呼ばれているもので、これ以外にも「総合型選抜」、「学校推薦型選抜」などの類型があり、日程はそれぞれ別に定められています。専門学校の場合は大学の日程とも異なります。

表2  大学入学者選抜、専門学校(東京都)学生募集時期

区 分

日 程

 

大学短大 

一般選抜

試験期日:2月1日~3月 25 日までの間

総合型選抜

入学願書受付:91日以降

判定結果発表:11 月1日以降

学校推薦型選抜

入学願書受付:11月1日以降

判定結果発表:12 月1日以降で一般選抜の試験期日の 10 日前まで

専門学校

AO入試

登録開始:6月1日以降

入学願書受付:9月1日以降

推薦入試

入学願書受付:10月1日以降

一般入試

入学願書受付:11月1日以降

出典:令和5年度大学入学者選抜実施要項、東京都専修学校各種学校協会のホームページ

上の表から分かるように、入試はマスコミ報道で話題になる時期よりも早く始まっています。

(3)高校卒業後の進路の決定時期

  高校卒業後の進路は、①希望進路の話合い・決定、②希望進路に沿った活動(具体的志望校の決定や受験、就職活動など)、③進路先の決定(進学の場合は入学手続き)といった順で進んでいきます。

文部科学省・国立教育政策研究所が令和元年12月に「高校生の進路に関する保護者調査」(以下、「文科省調査」)を行っています(注2)。対象は、高校3年生(修学支援新制度の実施初年度に大学等に入学することとなる生徒)の保護者です。

文科省調査によると、高校3年生12月時点における卒業後の希望進路は下表のとおりです。

表3  高校卒業後の希望進路

国公立大

私立大

短大・専門学校等

進学小計

就職・未定等

37.3

38.9

15.7

91.9

8.1

100.0

(注)今後の入試の結果等によって実際の進路は変わりうる。

 

文科省調査ではこの時点での進学先・就職先の決定状況も聞いており、下表のとおりとなっています

表4  希望進路別の決定状況(高校3年生12月)

希望進路

卒業後進路の決定状況

国公立大学(1051人)

うち9.9%が進学先決定

私立大学(1096人)

うち66.2%が進学先決定

短大・専門学校(443人)

うち90.5%が進学先決定

就職・その他・未定(227人)

うち82.4%が就職先決定

 

この表によると、調査時点で進学希望者の半数、特に短大・専門学校では9割が進学先の学校が決まっています。つまり、学校納付金の納付期限が決まっています。換言すると進学希望者の半数程度は12月に入学金等を払い終えている可能性があるということです。「早い」と思われる方も多いのではないでしょうか。進学費用の支援策に関する情報を早期に提供・入手する(費用の用意を早期に始める)必要がある理由の1つはここにあります。

 

ところで、日本学生支援機構(以下、「JASSO」)の奨学金の送金は大学等に入学後であり、入学前に必要となる費用については預貯金等家庭で事前に用意する必要があります。

預貯金の取崩し等で対応できない場合、①国の教育ローン、②JASSOの入学時特別増額貸与(労働金庫の入学時必要資金融資制度との併用)、③社会福祉協議会等の貸付制度、④民間の教育ローンの利用などが考えられます(①~③は先の高校教員向け資料でも紹介)。これらを利用する場合でも、関係機関を訪れての相談から申請、送金までに期間が必要です。ここにも早期の情報提供・入手が必要な理由があります。

 

2.希望進路の決定時期―希望進路別

 

卒業後進路の決定(費用の支払い)時期は上記のとおりですが、その前提となる希望進路の決定はいつごろでしょうか。

文科省調査によれば、卒業後の希望進路を決めた時期は下表のとおりで、小学校・中学校・高校入学後でだいたい1/3ずつとなっています。

 

表5 高校卒業後の希望進路の決定時期

決定時期

割合

小学校を卒業するより前

33.4

中学校のとき

31.8

高校生になってから

 

高校1年生のとき

15.9

高校2年生のとき

9.1

高校3年生になってから

9.8

合計

100.0

 

これを希望進路別で見ると下表のとおりです。

表6 希望進路の決定時期(希望進路別)

希望進路

/決めた時期

国公立大

私立大

短大・専門学校等

就職・未定等

小学校卒業前

46.1

35.5

12.2

1.5

中学校

36.8

30.7

25.7

25.5

高校生

1年生

11.6

16.8

22.1

20.4

2年生

2.9

9.5

19.9

15.8

3年生

2.7

7.6

20.1

36.7

合計

100.0

100.0

100.0

100.0

 

この表からは、希望進路によって決定時期が違っていることが分かります。つまり、希望進路が大学である者については決定時期は高校入学前(小学校卒業より前又は中学生のとき)であるとする者が多数を占め、特に国公立大学進学希望者では半数近くが「小学校卒業より前」と回答し、私立大学進学希望者よりもその比率は高くなっています。

他方、就職希望者、専門学校等進学希望者では「就職」ないし「進学」を決定した時期は高校入学後と回答した者が過半を占め、就職希望者の場合は 約37%が「高校3年生になってから」としています。

希望進路は一度決めたら変わらないというものではなく、様々な事情によって変わりますし、国公立大希望が私立大希望に変わることなどもあるでしょう。4の進路決定状況と合わせて見ると、早く決まっている学校種(専門学校等)を希望進路としている者に希望進路の決定時期が遅い人の割合が高いという状況になっています。つまり、この人たちにとって、希望進路を決定してから入学前の支払時期までの期間が短いということです。

ここに、希望進路の別や決定・未定に関わらず奨学金等の情報提供を早期に進める必要があります。

専門高校では就職者も多く、また専門学校への進学割合が高い(進学者の1/2弱、短大を含めると1/2強)ので、この必要性は一層高いと思います。

 

3.希望進路の決定時期―家庭の収入別

 

進学するか否かの決定には子供の希望や学力だけでなく,進学した際に学費が負担可能かどうかも影響します。高等学校PTA連合会の調査で保護者の75%が「家庭の経済事情が子どもの進路決定に影響がある」と考えています(6月号参照)。

文科省調査でも、世帯収入が高いほど希望進路を「大学」とする率が高く、「短大・専門学校等」・「就職・その他・未定」の率が小さくなっています。

希望する進路の決定時期を見ると、世帯収入が高い家庭の方が進路を決定する時期が早くなっています。例えば世帯収入400万円未満の場合の決定時期は半数が高校入学後ですが、1050万円以上の場合約6割が小学校卒業前に決めています。奨学金を必要とする家庭ほど、費用負担がネックで進路を決定する時期が遅くなっているということはないでしょうか。このような家庭ほど早期に情報を入手することが求められると思います。

 

4.希望進路と家庭の子供の数

 

  文科省調査では、家庭の子供の数の影響も調べています。

希望進路を家庭の子供の数別にみると、1人から2人までは大きな違いは見られませんが、3人で私立大学が若干減少し、短大・専門学校が増加しています。そして、「4人以上の世帯で大学進学率が明らかに低下し、就職他が増えている。いわゆる多子世帯における高等教育進学費用の負担は大きく、進路選択にも影響を及ぼしている」。このように調査報告書では分析しています。

また、希望進路の決定時期も子供の数によって違いがあり、子供の数が3人や4人以上の家庭では高校生になってから進路を決定する割合が高くなっています。特に4人以上の家庭では「高校3年生になってから」の割合が高くなっています。

表7 子供の数別の希望進路の決定時期

子供の数/決めた時期

1

2

3

4人以上

小学校卒業前

39.5

35.1

29.5

20.0

中学校

28.5

32.2

32.0

36.2%

高校生

1年生

13.7

15.6

17.0

20.0

2年生

9.8

8.3

10.6

7.6

3年生

8.4

8.8

10.9

16.2

合計

100.0

100.0

100.0

100.0

 

5.まとめー早期からの情報提供・入手の重要性

 

以上、文科省調査等から、希望進路の決定時期、進路の決定時期、学校納付金の支払時期、希望進路やその決定時期と家庭の収入や子供の数との関係などを説明してきました。

奨学金等の経済的支援に関わる情報は全員が必要としています。進学希望者に必要で、就職希望者や進路未定者には不要ということはありません。

実際に情報提供の取組をすると反応が薄い保護者や生徒もいると思います。しかし、そういう方々の中に奨学金等の情報を必要としている方はいます。そのためには、早期に全員を対象にしつつ、反応が薄い背景にある事情に留意した情報提供と注意喚起を始めることが適当ではないでしょうか。また、保護者の方も希望進路が決まってからとするのではなく早期に情報収集を始め、生徒の進路決定を支える必要があります。

 

「日本の社会と個人の未来は教育にある。」

これは、教育未来創造会議第一次提言中の「基本理念」の冒頭に書かれている言葉です。

第一次提言では修学支援新制度の拡大など多くのことが提言されており、政府の「骨太の方針」にも同様のことが盛り込まれています。その実現を期待したいと思います。一方で、制度を活用し恩恵を受ける人とそうでない人との「情報ギャップ」の拡大を心配する声もあります(注3)。現に、文科省調査でも奨学金を申請していない理由として、「タイミングを逃した」、「返済が心配」、「よく知らない」をあげた方が多く、特に家計の収入から修学支援新制度(給付奨学金等)の対象になりそうなのに「返済が不安で申請していない」という例が多数ありました。

このような情報ギャップに対して、第一次提言では「早期からの幅広い情報提供」を挙げ、「初等中等教育段階から繰り返しの情報提供を促進する」と示しています。この提言を踏まえた施策の実現を期待しています。

繰り返しになりますが、早期からの情報提供・入手は重要です。早い時期に進学に係る費用の支弁方法にめどをつけることで、何が希望かという本来の進路決定とその準備を支えることに近づくからです。

 

(注1)教育未来創造会議の第一次提言については、本誌8月号の本連載を参照

(注2)文科省調査は全国から高校350校を無作為抽出し、各校で任意の2学級を抽出して実施された。回答者数は2817人。回答者に占める進学希望者の割合が母集団よりも高くなっているが貴重なデータと評価されている。本調査結果は教育未来創造会議の第一次提言でも引用されている。

なお、他の全国調査での高校3年生時点での希望進路は下表の通り。

高校3年生の進路希望(調査時期は11月)   単位:%

調査年

進学

就職

その他

無回答

大学

短大

専門学校

その他

2002

51.5

7.1

19.3

0.8

18.4

2.6

0.5

2003

50.7

7.3

20.1

0.7

18.4

2.6

0.6

2015

57.4

5.5

16.7

1.3

18.1

1.2

0.4

出典:教育課程実施状況調査/学習指導要領実施状況調査

 

(注3)例えば、「今でも複雑な制度がさらに複雑になる。上手に活用して恩恵を受ける人と、制度の存在さえ知らない人との「情報ギャップ」の拡大を心配する声は多い」(「IDE現代の高等教育」20227月号P75

 

WSOPジャーナル第12号

月刊 『産業と教育』8月号 ”専門教育の充実に向けて” 掲載文

2022年8月17日

専門高校生の進学と進学支援策の有効活用を考える

―修学支援新制度の活用へのアドバイス―

 

NPO法人若者の進学応援プロジェクト     代表理事 石矢 正幸

 

1.はじめに 

18歳をめぐる社会的環境の変化について

社会的責任の強化

この数年、18歳を取り巻く社会的環境が大きく変わっています。高校3年生の多くが18歳となります。国は、高校生等の若い世代が政治に関心を持ち、その意見を政治に反映させるために2015年6月の法改正で選挙権を有する年齢を18歳に引き下げ、さらに2022年4月には民法上の契約が可能となる成年年齢も18歳に引き下げ、大学等への進学後に送金を受ける奨学金の予約採用申し込みにおいても、書類上親権者の同意は不要となりました。同時に少年法も改正され18歳への対応がこれまで以上に厳格になるなど、18歳に達した若者に対して、社会的な自立と責任が求められています。

社会的支援の強化

一方、18歳が直面する進学等への経済的な支援制度も大きく変わりました。2017年には意欲・能力があるにも関わらず、経済的理由で進学を諦めている学生への支援として国の給付奨学金が創設され、さらに2020年からは少子化対策という新たな要素が加わり、これまでの財政規模を大きく拡大し修学支援新制度として、給付奨学金や授業料減免制度を拡充しました。

高校生にはこれまで以上に社会的責任が強く求められると同時に進学支援も拡充され、さらに新たな政策も検討される等支援の広がりを見せています。

今回は、進学への支援策である修学支援新制度の概略のリマインド(再確認)と、制度開始から2年経過し、注意すべき点が徐々に明らかになってきていることの中から、特に専門高校生が修学支援新制度への申込みにおいて注意すべき点について考えてみます。 

2.修学支援新制度と注意点について

ご存じのように修学支援新制度とは、低所得者世帯の進学率の向上、少子化への対処に寄与することを目的に、「学費については各学校の授業料減免等で措置し、生活費については給付奨学金を支給することで対応する」ために創設された制度です。

経済的に厳しい学生には利便性の高い制度ですが、まだ多くの高校生や保護者の方に十分情報が周知されていないように思います。(給付奨学金年間予算51万人に対し、令和3年度実績32万人)

この修学支援新制度は給付奨学金と授業料等減免がセットになっています。このセットの申し込みは日本学生支援機構(以下、JASSO)の給付奨学金を申込むことから始まります。

国は、しっかりとした進路への意識や進学意欲があれば、家庭の経済状況に関わらず、高等教育に進学できるチャンスを確保するための制度として位置付けています。

採用基準には、学力基準と家計基準がありますが、予約採用においての学力基準は高校での5段階評価で3.5以上であること、これに該当しない場合は進学しようとする学習意欲等を面接やレポートで確認することとなっています。

家計基準は住民税非課税世帯かそれに準ずる世帯の学生となっています。

◎給付奨学金申込の時に注意すべき事

家計年収はあくまで目安、必ずJASSOのシミュレーション(試算)で確認を!

表1 年収の目安(両親と子供2人の場合)

*一人の親だけの給与収入の場合

我々の若者の進学応援プロジェクト(以下、WSOP)の相談者の中には、パートをされている方が多く「パートの収入の100万円も入れると、世帯年収が500万円近くになり、給付奨学金は該当していない」と始めから給付奨学金を諦めている例が多くあります。給付奨学金の家計基準は課税標準額等により、設定されています。パートも含め給与等には税金上それぞれ控除額が認められているので、上記の目安とされる金額に含めなくても良い収入があります。実際にシミュレーションで試算をしてみると意外と第2や第3区分に該当している例が見受けられます。

最近では「大学に入学して、給付奨学金を貰えそうだと気付きました。今からでも申請は出来ますか」という質問もありました。高校の時に気付いていたら、家計負担も少なくて済んだかもしれません。

 

◎必ず進学先が認定されているかの確認を

給付奨学金や授業料減免の制度を受けるには、進学先が修学支援新制度の適用の確認校であることが条件となっています。

WSOPには学生本人から「予約採用で給付奨学金採用候補者になったけれど、良く調べたら学校が対象から外れていた。どうしたらいいですか」といった質問もありました。

 

表2 修学支援の対象になることの確認を受けた学校(確認校)

*令和4年5月31日現在

大学等は約98%、専門学校(専修学校専門課程)の75%の学校が確認校として給付奨学金等の修学支援の対象になっています。

大学等では21校、専門学校では674校が確認を受けていません。進学校や学科を決める前に、必ず学校のHP等で対象の学校か、特に専門学校については学科についての確認も必要です。

専門高校では卒業生の25.3%が専門学校等に進学していてその確認は特に重要です

 

◎給付奨学金の月額と授業料等減免の金額の考え方

給付奨学金の月額については、住民税非課税世帯を第1区分として、学生が学業に専念するため、学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるように措置されています。

入学金の減免の金額は、国立大学では入学金の標準額を、私立における入学金は私立の入学金の平均額を減免額としています。

授業料の減免の金額については、国立大学は授業料の標準額とし、私立については国立の標準額に私立の平均授業料を踏まえた額と国立の標準額との差額の2分の1を加算した金額を減免しています。

表3 給付奨学金の月額(第1区分)

*生活保護等で自宅生の場合上乗金額がある。

表4 授業料等減免額の上限額(第1区分)

*年額、住民税非課税世帯

上記、第1区分の他に住民税非課税世帯に準ずる世帯として、第2区分と第3区分をもうけています。

第2区分(4人家族目安年収303万円)の給付月額や授業料等減免の金額は第1区分のそれぞれの3分の2の金額となっています。

第3区分(4人家族目安年収378万円)

は同様にそれぞれの3分の1の金額となっています。

 

◎進学先で継続して給付奨学金・授業料減免を受ける為に

高校で予約採用を申込む時から適格認定について知っていることが大事です。進学

先の学校では、10月頃から奨学生としての資格の有無の適格認定の手続きが始まります。

WSOPには、「4月から給付奨学金と授業料減免の対象だったが、親の収入が増えていて、10月から打切りになります。どうしたらいいですか」と言った相談が10月頃から多く寄せられます。

JASSOでは毎年マイナンバーで取得した情報で、世帯収入の基準の見直しを行います。

学生自身が世帯収入の状況を知ることは難しいことだと思います。本人があまり把握できない前年の世帯収入で給付奨学金・授業料減免の適格性が認定されることになります。

修学支援新制度の適用を受けている学生の保護者の方は、世帯収入が子供の奨学金に影響する事を意識する必要があり、適格認定の区分の見直しで奨学金がもらえない、あるいは減額になった時はどう対応するのかを子供のためにも事前に考えておくことをお勧めします。

 

適格認定は「学業等」についても行われます。学籍等の管理は継続して行われますが、毎年、12月になると奨学金の継続願いの提出が求められます。その際、学業等の適格性も認定されます。

一般的に修得単位が標準単位数の半分以下だった場合や、出席率が5割以下で学習意欲が低いと学校が判断した場合等は「廃止」。

修得単位が標準単位数の6割以下だった場合やGPA(平均成績)等が下位4分の1の場合や出席率8割以下など、学習意欲が低いと学校が判断した場合等は「警告」等の措置があります。改善が見られない場合は「廃止」となります。

大学生から「学業が理由で奨学金の給付と授業料減免が受けられなくなった。昨年GPAについて、学校から通知が来たがあまり気にしていなかった。」と相談がありました。給付奨学生としての自覚も必要で、学校の授業への出席や勉強することは学生の本分と言えると思います。

 

3.進学支援についての改革の方向性

【教育未来創造会議第一次提言による】

給付奨学金・授業料減免の対象者の拡充

政府の教育未来創造会議では修学支援新制度として導入した給付奨学金・授業料減免制度適用の対象者を中間所得層まで拡大し、多子世帯理工系・農学系の学部で学ぶ学生(女子学生への支援強化も)への必要な改善についても提言しています。

 

貸与奨学金の柔軟な返還制度の導入

貸与奨学金(有利子・無利子とも)においても返還負担の軽減のために返還者の判断で  

柔軟に返還できる仕組み(いわゆる出世払い)を創設することを提言しています。

一方、奨学金制度が複雑な仕組みになっていることから奨学金に関する情報を初等中等段階の早い段階から情報提供を促進することについても提言しています。

今回の教育未来創造会議の提言の内容である修学支援新制度の中間所得層までの拡大や理工系・農学系等への支援強化は技術系の多い専門高校生には大きな支援になると思います。これらの提言は当面2024年の実施を目途にしていますが、紆余曲折が予想されます。在学中の専門高校生やこれから専門高校を目指す中学生や保護者はこれからの動きに注視しておく必要があります。

修学支援新制度の導入の効果として、住民税非課税世帯の進学率は顕著に上昇し、令和3年3月の高等教育への進学率は83.8%(文科省学校基本調査)と過去最高になっています。この制度の内容の周知が進みなおかつ新たな改革で対象者を拡充することになれば進学率は一層高くなると思います。

 

4.最後に

修学支援新制度は導入4年後に見直されることになっていますが、現状では家計収入の増減が給付奨学金に影響する事を意識することが必要で、これまで以上に家庭内で情報を共有することが大事です。この制度を利用し給付奨学生であり続けるため、あるいは修学を継続するためには学生本人が家計や生活費に対し自立した考えを持つこと、授業への出席や学業への責任を持つことが求められています。

出典  文科省:令和3年度学校基本調査、HP

日本学生支援機構:令和2年度年報

令和2年度実績報告書、HP

 

WSOPジャーナル第11号

月刊 『産業と教育』6月号 ”専門教育の充実に向けて” 掲載文

2022年7月11日

専門高校生の進学と進学支援策の活用

専門高校生の卒業後の進路を考える―専門高校で学んだ専門をさらに深め、広げるために

NPO法人若者の進学応援プロジェクト     副代表理事 月岡英人

 

若者の進学応援プロジェクト(WSOP)は2017年5月に東京都から認証を受けたNPO法人です。高校生やその保護者の方などが奨学金など進学に際しての経済的支援に関する情報を入手することをお手伝いし、将来の目標を達成することに資することを目的として活動しています。

4月号では、4月が日本学生支援機構(以下「JASSO」)の奨学金の予約採用の手続きが始まる時期になることから、予約採用の申込みに際して留意した方が良いと思われる点をご紹介しました。

 

6月号では、卒業後の進路や進路決定に際して大事な学習の状況などについて取り上げます。

高校卒業時の進路の選択は非常に大事です。中学校卒業時はほぼ全員が高校に進学しましたが、これに比べて高校卒業後の進路選択は多様です。高等学校で職業を主とする学科(以下「専門高校」)に学ぶ生徒は、多くの専門科目の学習をしており、高校卒業の時点で相当程度の専門的な知識、技術を身に付けています。主にはこれを生かす就職か、これを深め又は広げる進学かという選択になると思います。ある意味では初めての選択と言ってもよいと思います。そしてこの選択が将来を大きく変えていく可能性があります。

生徒本人はもちろん保護者の方にも関心を持っていただければと思います。

 

1.卒業後の進路の概要

(1)令和33月卒業者の進路

現在、専門高校に学ぶ高校生は全高校生の約18%となっています。

卒業後の進路を見ると、就職と大学等への進学の割合は就職の方がやや多いもののほぼ11となっています(令和3度学校基本調査)。専門高校の進学の特徴は、専修学校専門課程(以下「専門学校」)への進学が多いことで、進学者の5割程度を占めています。また看護科を中心に高校の専攻科に進学する者が4,000人強いることも大きな特徴です。

 

1 高校(全日、定時)卒業後の主な進路(令和3年度)

 

全体

構成比

専門高校

構成比

1,012,007

 

182,234

 

大学

534,312

52.8

28,202

15.5%

短大

40,969

4.0

7,319

4.0%

高校専攻科

4,501

0.4

4,352

2.4%

専門学校

175,185

17.3%

40,614

22.3%

その他進学

48,322

4.8%

5,524

3.0%

就職

159,126

15.7%

91,316

50.1%

※中等教育学校は含んでいない。

※大学、短大には通信教育部、別科を含まない。

※その他進学は、専修学校(一般課程)等。

※就職には進学者で就職した者を含む。

※表2、表3において同じ。

 

(2)国の修学支援新制度の実施前後の変化

4月号でもご紹介しましたように、2020年度(令和2年度)から国の修学支援新制度(給付奨学金と授業料等の減免制度)が始まり、大学等への進学率が上昇しています。ここで、新制度導入前後の卒業後の進路の変化を見たいと思います。

高校卒業者全体で見た場合、大学等への進学率は、20193月卒業者76.6%が20213月卒業者79.4%へと上昇しています。そのうち専門高校については43.2%が47.2%へと全体の上昇幅を上回って上昇しています。専門高校の場合、この伸びは大学や短期大学への進学率の上昇もありますが、特に専門学校への進学率の上昇という形で表れています。

逆に就職率は、高校生全体で17.7%から15.7%へ、専門高校についても54.1%から50.1%へと下がっています。

 

2 専門高校(全日、定時)卒業後の主な進路の変化

 

R3年度(2021年度)

R1年度(2019年度)

全体

専門高校

全体

専門高校

大学

52.8

15.5

49.8

14.6

短大

4.0

4.0

4.4

3.9

高校専攻科

0.4

2.4

0.4

2.2

専門学校

17.3

22.3

16.4

19.9

その他進学

4.8

3.0

5.6

2.6

就職

15.7

50.1

17.7

54.1

(参考)進学計

79.4

47.2

76.6

43.2

 

2.卒業後の進路選択―保護者世代との比較

高等学校PTA連合会は、高校2年生とその保護者を対象に隔年で「高校生と保護者の進路に関する意識調査」(以下「高P連調査」)を行っています。高P連調査(2021年)によると、高校生の83%、保護者の89%が卒業後の進路について話すと回答しています。また、高校生の71%が保護者からアドバイスをしてほしいと回答しています。このように進路の決定には保護者も重要な役割を担っています。

直近の専門高校の卒業後の進路は上で述べた通りですが、高校生の保護者の方が高校生であったと思われる時期(1990年頃)の進路は下表の通りでした。

 

表3 保護者世代の専門高校(全日・定時)卒業後の進路

 年

高校卒業者数

うち専門高校

卒業者

進学計

就職

1990

1,766,917

439,789

101,724

328,469

1995

1,590,720

381,151

127,794

234,047

2000

1,328,902

298,875

123,806

144,723

 

 変化を1990年からグラフで見てみます。

この表とグラフから明らかなように、保護者の方が高校生の頃は専門高校卒業生の4人中3人が就職を選択していました。つまり就職が「普通」でした。その後就職率は大きく下がり、横ばいないし微増で推移しています(ただし、上で見たように2021年度に大きく下降しています)。この背景には、高校卒業生への求人数の増減もあると思われます。

このように、今は就職も進学も「普通」(言い換えるとどちらも「普通ではない」)と言える状況ですので、選択において自らの考えがより重要になっていると思います。

 

3.進路選択に向けての準備―学力の不安と対応

高校生にとって進路選択について最も気がかりなことは学力です。

P連調査(2021年)では高校生の55%が「学力が足りないかもしれない」と回答しています。うち、進学希望者に限定すると61%となり、専門高校卒業者の進学先として大きな比重を占める専門学校を希望進路として考えている高校生に限っても45%が同様に回答しています。就職希望者でも4人に1人はこの不安を持っています。

実は奨学金等の経済的支援を求める上でも学業成績は重要な要素になっています。例えば国の奨学金の仕組みであるJASSOの奨学金では採用基準として学力基準を以下のように定めています。

給付:高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること(注1

1種:高等学校等における申込時までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上である(注2

2種:高等学校等における申込時までの全履修科目の学習成績が平均水準以上である等

(注1)この基準に並列して「将来、社会で自立し、及び活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること」が示されている。

(注2)一定の条件に該当する者はこの基準を満たしていない場合でも基準を満たしているとして扱われる。

 また、入学試験の成績などを元に奨学金の給付や授業料等の減免を行う制度を持っている大学も多数あります。つまり、学業成績が良いと応募できる支援方策の選択肢が増え、そして採用される可能性も高くなるということです。

なお、上記の注(1)、(2)のように学習成績以外の学力基準もありますから、学習成績の基準を満たしていないからと諦めないことも大事です。

 学力は積み上げなので日々の努力が必要です。では高校生はどの程度の時間を学習に当てているのでしょうか。平成2711月に、全国の高校生を対象に無作為抽出で行われた大規模調査である「平成27年度高等学校学習指導要領実施状況調査」によると以下のようになっています。

 

4 平日の学校外の学習時間(高校3年生)

全く、又はほとんどしない

30分未満

30分以上1時間未満

1時間以上2時間未満

2時間以上3時間未満

3時間以上

30.6

9.5

10.0

9.9

10.3

29.5

(注)質問文は「平日、学校の授業以外に、1日だいたいどれくらいの時間、勉強をしていますか(塾等での勉強時間を含みます)」

(注)選択肢の「その他」、回答の「無回答」は省略

 

この表にあるように、大学入試の直前の時期(11月)に高校生の3割は平日学校の授業以外で全く又はほとんど勉強していません。この表から見ると、1日に1時間程度勉強するとよく勉強する方から数えて全体の半分前後の位置になります。「学力が足りないかもしれない」と不安に思っている人は学習時間を確保する(周囲の人は確保する手助けをする)ことから始めてはどうでしょうか。

 そして、この努力は早く始めた方が良いと思います。なぜなら、JASSOの奨学金の予約採用を申し込む場合、採用基準である学習成績は高校1年と2年生時の成績だからです。

ところで、学習時間は小中学校を通して同じような状況でしょうか。中学校の実態を見てみましょう。

 

5 平日の学校外の学習時間(中学生)

 

全く、又はほとんどしない

30分未満

30分以上1時間未満

1時間以上2時間未満

2時間以上

1

12.2

14.8

29.3

32.9

10.4

2

16.6

17.7

29.8

28.1

7.5

3

10.6

9.8

18.6

32.1

28.6

(出典)平成25年度中学校学習指導要領実施状況調査

この数字を見ると、高校生の方が中学生と比較して「全く、又はほとんどしない」割合が2倍~3倍程度多いことが分かります。逆に言うと、今は「全く、又はほとんどしない」高校生でも、中学生の時にはある程度の時間毎日勉強していた経験があるということです。中学校時代のこの学習の習慣を高校入学以降も維持できれば、上で述べた1時間程度の学習時間を確保することにつながるのでないかと思われます。

 また、学校外の学習時間は高校生全体で見ると上表の通りですが、この状況は学校によって異なると言われています。つまり長時間学習する生徒の割合が全国計よりも高い学校もあれば、低い学校もあるわけです。学校外で勉強しない生徒が多い場合、それがその学校の生徒にとっては「普通」となる可能性があります。自分の周りの姿を「普通」と決め込まないで取り組むこと、学校ではこれが普通にならないようにする工夫も求められると思います。

 

4.修学支援新制度等の認知度と期待の高まり

P連調査(2021年)によると、保護者の75%は家庭の経済事情が子どもの進路決定に「影響がある」と考えています。このことについて、どのように対処すればいいのでしょうか。

国においては、経済的理由によって進路が決まってしまうことのないよう奨学金制度の拡充、特に給付奨学金の導入を進めてきました。

修学支援新制度は、2019517日に「大学等における修学の支援に関する法律」が公布され、実施への準備が始まり、2020年度から実施されています。

P連調査(2021年)では、保護者の制度の認知度は6割を超えています。前回調査(20199月~10月)では約2割でした。前回の時点で既に20204月からの実施を目指して予約採用の申込みその他の準備が進行していましたので、保護者の認知度は実際に制度が開始されてから急速に高まったことになります。

そして、子どもの進学を希望する保護者の5割強が修学支援新制度を利用したいと回答しています。また、貸与型の奨学金についても4割弱の保護者が利用したいと回答しています。

 

表6 子どもの進学を希望する保護者の意向等

修学支援新制度の利用

ぜひ利用したい

25.9

できれば利用したい

25.7

貸与型の奨学金の利用

ぜひ利用したい

18.0

できれば利用したい

19.5

 

 修学支援新制度には、2020年度約27万人が採用され、翌2021年度には約32万人と増えていますが、国の予算枠の約51万人には及んでいません(2022327日読売新聞)。

制度の実施が認知度を高め、そのことが制度の利用を促すことを考えると、今後も修学支援新制度やその他の奨学金等への保護者の関心は高まり、そして大学等への進学を希望する生徒の割合は増加を続けていくのではないでしょうか。

ぜひ、このような関心を奨学金などの支援策の情報の収集と活用の取組へと一歩進めてほしいと思います。

 

5.今月号の結びと次号以降のご紹介

高校卒業時の進路選択は非常に重要です。

先にも触れましたように、高校生にとって進路選択について最も気がかりなことは学力です。また、保護者の75%は家庭の経済事情が進路決定に影響があると考えています。

 これに対応するには、生徒本人は学習時間の確保などで学力の向上を図り、保護者・生徒とも奨学金をはじめとする経済支援方策をよく知って活用することで経済面の不安を軽減し、保護者・本人の選択肢を広げていくことが不可欠だと思います。ぜひ早い時期からの取組をお願いします。

 奨学金等の経済的支援策に関しては4月号で予約採用に焦点を当てて特に重要な留意点を紹介しました。8月号以降でも順次ご紹介します。ご活用いただきたいと思います。

 

WWSOPジャーナル 第10号

WSOPジャーナル第10号

月刊 『産業と教育』4月号 “専門教育の充実に向けて“掲載文

2022415

専門高校生の進学と進学支援策の活用 ―JASSO予約採用申込へのアドバイスー

NPO法人若者の進学応援プロジェクト     代表理事 石矢正幸

 

はじめに

若者の進学応援プロジェクト(以下WSOP)は大学等への進学に当たっての奨学金等の経済的支援制度について高校生やその保護者の方々へホームページ(HP)や講演会等を通して情報を提供しています。また、ホームページや教育委員会等と連携した相談会等から色々なご質問や相談を受けて、進学資金への不安や悩みが軽減されるように色々な情報もお伝えしてきました。本誌において、奨学金等の進学支援についての基本的な事を説明させていただきながら、そういった情報を織り込んで定期的(2か月に1回程のペース)に進学支援の詳細についてお話をさせていただきます。

◎修学支援新制度の導入とその効果

令和2年度から住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生に対し、給付奨学金と授業料減免制度を拡充する修学支援新制度が導入されました。その結果、同年度には27万人の学生がこの新制度の適用を受け、文科省の推計によると住民税非課税世帯の進学率は約10%上昇したそうです。また、昨年12月に

公表された学校基本調査では、令和3年3月

卒業者の高等教育への進学率は83.8%と過去最高になっています。この制度は専門高校からの進学へ大きな支援になります。

◎進学には奨学金等を活用する時代(学生生活調査結果)

奨学金等の支援制度の充実で学生の就学環境は大きく変わります。日本学生支援機構(以下JASSO)の学生生活調査(令和2年度)によると、大学生(昼間部全国平均)の1年間の学生生活費は181万円(内訳、学費115万円、生活費66万円)で、その学生生活費に対する家計からの支援額は114万円となっています。その差の67万円は学生自身がアルバイトや奨学金で賄っている構図となっています。

もちろん、余裕のある世帯では、学生生活費すべてを支援することも可能でしょうが、この調査では平均的な家庭においては、保護者の収入だけでは子供たちを高等教育に進学させるのが困難な状況であることを表しています。

一方、昨年7月の大学生協のコロナ禍での緊急アンケート調査では、学生のアルバイト

の就業機会が減少し、奨学金への依存度が高

くなっているそうです。

JASSOの奨学金について

専門学校や大学等の学校において、令和2年度のJASSOの給付・貸与奨学金の新規採用数72万人、給付・貸与人員148万人となっています。JASSOの奨学金には給付奨学金、第一種奨学金(無利子)、第二種奨学金(有利子)、入学時特別増額貸与奨学金(有利子)があり、それぞれに家計と成績による基準が設けられています。

JASSOの奨学金の申込みは、進学する前に高校等で申込む予約採用と、進学先で申込む定期的な採用と家計急変等による緊急・応急的な採用があります。

例年4月は全国の高校において、JASSOの奨学金利用者の大半が利用する予約採用の申込みが始まる時期でもあり、ここではJASSO予約採用の申込みにフォーカスしてお話しします。

 

1.予約採用での申込を(予約採用のメリット)

進学か就職か進路で迷っていたら、予約採用の申込みを検討してみませんか?WSOPには年明け2・3月になると、予約採用の申込みをしていなかった方から「進学することにしたが、入学金や学生生活費等の資金についてあまり考えていなかった、今から何とかならないか」等の質問が多くなります。

JASSO奨学金の申込みは進学した学校で申込むこともできますが、この春に高校等で申込む予約採用には、大きく以下のメリットが考えられます。

(1)進学前に奨学金の交付等の結果が決定

しているので大事な時期に安心して受験や

入学準備に専念できる。

(2)入学等の費用の為に入学時特別増額貸

与奨学金を申し込む事が出来る。

(3)進学後、奨学金の早期交付が受けられ

る(入学してから申込む在学採用より早く

交付される可能性が高い)。

次に予約採用の申込みにおいて、皆さんが判断に悩まれていることや事前に情報を得るべきことについて説明します。

 

2. 進学届時に変更可能な事項について

予約採用の申込みの時は、進学するかどうか、あるいは進学先が決まっていない状況で奨学金を申込むことになります。申込書類の中には、このように進路が不明な状況で選択しなければならない事項が多くあります。

高校等で申込んだ予約採用の候補者になると、大学等への進学後に進学届を提出して奨学金の交付を受けます。以下の事項は予約採用の時に申込んだ内容を、進学後に提出する進学届で変更することができます。予約採用を申込む高校3年の春から大学等へ進学までの期間にどの選択が自分にとっていいのか見直してはいかがでしょう。

〇交付を受ける奨学金の種類

ただし、採用候補者に決定している奨学金に限られます。

〇貸与型の奨学金の月額

〇貸与型の奨学金の保証制度(機関保証・人的保証)

〇第一種奨学金の返還方式(定額返還か・所得連動返還か)

〇第二種奨学金の金利方式(固定金利か・変動金利か)

これらの事項の選択には、多くの皆さんが

悩まれています。以下に、参考として説明

させていただきます。

(1)交付を受ける奨学金の種類

予約採用の申込みの時には給付・貸与の全ての奨学金を申し込むことができます。採用される可能性のある奨学金は入学時特別増額貸与一時金も含めて、幅広に申し込むと進学届の時に選択の余地が広がります。

進学届提出時に必要な奨学金だけ選択したり、あるいは申し込んだ奨学金の全てを辞退したりすることもできます。不要だと判断した奨学金は選択しないことで辞退として扱われます。皆さんが心配される申し込まないことへのペナルティー等はありません。

(2)貸与型の奨学金の月額

貸与型奨学金の月額は、学校の種別や設置者それに通学形態別に決まっていますが、それぞれの月額の中には最高額とそれ以外の月額等と選択することができます。進学先が決まり、学費や生活費が明確になってから、奨学金はいくら必要かを考えて改めて月額を選択することができます。

(3)貸与型の奨学金での保証制度(機関保証か・人的保証か)

JASSOの貸与型奨学金(無利子貸与・有利子貸与)は全ての人が返還を保証するための保証制度の選択が必要となります。

保証機関(公益財団法人日本国際教育支援協会)に保証を依頼する機関保証制度と、連帯保証人と保証人の2名を立てる人的保証制度のどちらかを選択することになります。

機関保証制度

機関保証制度は、連帯保証人や保証人が立てられなくても奨学金を借りて進学できるようにすること(18歳自立型社会の構築支援)等を目的としています。創設に当たって、学生が支払う保証料は低廉であること、運営は収益を追求しない公益法人が担当すること等の国会審議を経て創設された制度です。本人が一定期間延滞した場合、保証機関は本人に代わって支払いをし、その後本人は保証機関から支払いを請求されることになります。

人的保証制度

人的保証は、本人が延滞した時には連帯保証人と保証人が代わりに返還する制度です。

人的保証を立てるには連帯保証人と保証人各々の印鑑証明書と署名等が必要です。それぞれの保証人は返還完了まで返還について保証し、本人が延滞した場合、連帯保証人・保証人が督促の対象になります。

保証制度の選択時の一つの考え方(参考)

どちらの保証制度を選択すればいいのかと相談を受けます。参考として機関保証制度は上記のように国会の審議の結果を踏まえて低廉であること、公益法人が業務を担っている制度であること、支払った保証料は、早期に完済すれば未経過分の保証料は手数料を除いて返戻されること等も説明させていただいています。

(4)第一種奨学金(無利子)の返還方式(定額返還か・所得連動返還か)

第一種奨学金については、定額返還か所得連動返還方式のいずれかを選択することができます。定額返還方式は貸与総額によって、返還期間と返還月額が決まる方式です。所得連動返還方式は前年の所得に応じてその年の返還月額が決まります。所得に応じて返還月額が変わることで返還者の負担が軽減されることを考慮して導入された制度でもあります。経済的に返還することが厳しくなった場合には、どちらの返還方式も返還期限猶予制度の利用ができますが、定額返還方式には返還が厳しくなった場合には返還月額を2分の1や3分の1に減額して返還できる制度もあります。また、どちらも繰り上げ返還は簡単にできます。

(5) 第二種奨学金の金利方式(固定金利か・変動金利か)

第二種奨学金を借りる場合は、金利を固定金利にするのか、5年毎に見直しされる変動金利にするのかの選択が必要になります。現在、変動金利は低利になっていますが、将来見直しされて金利が上がる可能性もあります。これから先の金利の動向について予想するのは困難だと思います。(参考:これまでの金利推移についてJASSOHPに掲載されています)

もし、固定金利に比べ低利な変動金利を選択した場合、出来るだけ低利な金利が適用されている間に繰り上げて返還することで変動金利の将来の金利上昇リスクは避けられると思います。

 

3.奨学金の活用について

保護者の方から「奨学金は経済的に困窮した世帯しか借りられなく、我が家の収入ではJASSOの奨学金は借りられないと思っていた。」というお話をお聞きします。目安ですが、4人世帯(両親と本人と中学生)で1,100万円以内の給与収入であれば第二種奨学金は借りることができます。

第二種奨学金の金利は、貸与が終了する時の財政投融資の金利(政府が公的な機関に貸し付ける金利)を基本として適用されます。その金利は返還金に上乗せされて支払う事になります。例えば、令和3年3月貸与終了者

の場合、固定年利0.268%、変動金利0.004

%となっています。

基本的に財政投融資の金利が適用になることで、民間金融機関より低利に設定されています。第二種奨学金は有利子であることから、借りることにためらいを感じる方も多いように思います。第二種奨学金にも返還金額減額制度や返還期限猶予制度等のセイフティーネットはあります。金利が上昇しても基本額部分は3%を超えることはありません。これらのことを考えると、第二種奨学金の利用を柔軟に考えてもいいのではないでしょうか。

最後に

修学支援新制度で給付奨学金や授業料減免制度が拡充され、特に経済的に厳しい生徒の学びの機会は広がったと思います。また、多くの学生が修学支援新制度を利用したことで、他の財団法人や大学等の給付奨学金が利用しやすくなっているという話も聞きます。卒業後の返還を考えると先ず給付奨学金の利用を考えるべきです。これから、JASSO以外の給付奨学金の基準が緩和される可能性もあります。進学先で自分にとって有利な支援制度を探してみるのもよいかもしれません。

貸与奨学金を利用する場合は将来の返済を考えて借りる金額は出来るだけ少なく抑えることも重要です。

 

奨学金制度は社会が学生の皆さんを支援する仕組みです。その意義と色々な手続きを忘れないで学生生活を有意義に過ごされ、それぞれの夢の実現を願っています。

出典

文科省:令和2年度学校基本調査(HP

日本学生支援機構:令和2年度学生生活調査

令和2年度年報、令和2年度事業報告書等WSOPジャーナル 第9号

WSOPジャーナル(9号) 特別号

WSOPジャーナル9号

月刊 『産業と教育』9月号 特集「専門教育への期待」に奨学金等の支援制度について掲載されました。

20211015

専門高校で学んだ専門をさらに深め、広げるために、大学等への進学を目指す皆さんへ

NPO法人若者の進学応援プロジェクト     副代表理事 月岡英人

 

若者の進学応援プロジェクト(WSOP)は20175月に東京都から認証を受けたNPO法人です。

大学等への進学に当たっての奨学金等の経済的な支援に関する情報について、ホームページによる提供、保護者の方等を対象とする相談会や高等学校・大学から依頼を受けての説明会の実施などを行っています。20204月には都内の教育委員会と協定を締結し、区域内の高等学校での説明会や住民対象の相談会の開催に協力するなど行政機関との連携も強化しています。

 

1.はじめに―専門高校をめぐる状況

 

現在、職業教育を主とする学科(以下「専門高校」)において学ぶ高校生は全高校生の約18%となっています。専門高校に学ぶ生徒は、多くの専門科目の学習をしており、高校卒業の時点で相当程度の専門的な知識、技術を身に付けています。

専門高校の生徒の卒業後の進路を見ると、就職と大学等への進学の割合は就職の方が多いものの、11に近い状況となっています(令和2度学校基本調査)。専門高校の進学の特徴は、専修学校専門課程(以下「専門学校」)への進学が多いことで、進学者の5割程度を占めています。また看護科を中心に高校の専攻科に進学する者が4,000人強いることも大きな特徴です。近年専門職(短期)大学の制度が創設されましたが、これも生徒の進路に多様性を加えていくと思われます。

 

 

1 高校(全日、定時)卒業後の主な進路(令和2年度)

 

全体

構成比

専門高校

構成比

1,037,284

 

188,366

 

大学

529,009

51.0

27,288

14.5%

短大

44,200

4.3

7,391

3.9%

高校専攻科

4,482

0.4

4,323

2.3%

専門学校

174,822

16.9%

37,963

20.2%

その他進学

50,830

4.9%

4,780

2.5%

就職

180,560

17.4%

101,653

54.0%

※その他進学は、専修学校(一般課程)等

※就職には進学者で就職した者を含む

 

ところで、進学するには入学試験という関門もありますが、授業料等様々な費用が必要になり、この費用がいくらくらいか、どのように賄うのかも大きな問題となります。現在、大学等に学ぶ者の5割前後が何らかの奨学金を利用しており、さらに2020年4月から国の修学支援新制度が始まっています。これらの制度をよく知ってどのように利用するかどうかは重要です。

専門高校の卒業生が、高校で学んだ専門内容を深化し、あるいは専門の幅を広げ、専門性を生かしながら将来の職業生活等を円滑に送ることは、本人のみならず我が国社会の発展にとっても重要なことです。

本稿では、これらの生徒や保護者が進学に係る費用のことを知り、奨学金等の修学支援に関する諸制度を適切に利用することで学業を円滑に収めることを支援するという観点から説明していきたいと思います。なお、奨学金の金額等は日本学生支援機構(JASSO)から配付される募集案内等をご覧ください。

 

2.進学に要する費用とその調達

 

大学等で学業を継続するために必要となる費用は、大きくは学費と生活費に分けられ、うち学費は授業料等の学校に納付する費用と通学費等の在学に伴って必要となる費用に分けられます。

必要となる時期ということでは、入学前と入学後(在学中)に分けて考えられます。

これらの費用については、JASSOの学生生活調査などが定期的に行われており、これらを基に現状を簡単に紹介します。

 

(1)入学までに幾ら必要になるか

入学までに必要となる費用は、①受験時に必要な費用と②受験し合格発表後に必要となる費用に分けられます。入試の方法等によっては合格発表時期が早い、つまり支払いの時期が早いことに留意が必要です。

(ア)受験に必要な費用

受験料、受験のための費用がこれに該当します。JASSO資料(進学マネーハンドブック2021年度版)では約20万円と紹介していますが、受験する学校数や自宅との距離等によって増減します。奨学金は利用できないので、例えば預貯金など他の方法によって確保しておく必要があります。東京都の場合、受験料については「受験生チャレンジ支援貸付事業」の利用も考えられます(後述します)。

なお、オープンキャンパスへの参加など受験校を決める前にも費用が生じることも考慮に入れておく必要があります。

(イ)受験後入学するまでに必要な費用

入学金、入学に伴う諸費用、そして新たな生活を始めるための費用が該当します。自宅外通学のアパートの契約金や生活用品の購入費等も必要です。先のJASSO資料では平均して100万円~200万円(いわゆる滑り止めで受けた学校に払った入学金(平均30万円)を含む)としています。

 入学金等の学校納付金には納入期限があり、金額とともに募集要項に明記されています。あらかじめ確実に手当てしておくことが必要です。合格発表後に費用の手当てに動き出すのでは間に合わない恐れがあります。

国の修学支援新制度は入学金も対象としていますが、支援は1回だけで、実際に入学した学校の入学金が対象となります。納入を待ってくれるのか、あるいは一度納入してから返還されるのかは学校の決定ですので、事前に調べておく必要があります。JASSOの入学時特別増額貸与奨学金も送金は入学後です(後述します)。

(2)在学中はいくら必要になるか

大学、短期大学、専門学校の学生生活費の調査結果(専門学校は試行調査)がJASSOから発表されており、比較に留意しながら紹介します。

 学生生活費の年間平均額は、大学約191万円に対して、短期大学約163万円、専門学校約約176万円で、近年の傾向では大幅な増減はありません。その内訳は下表の通りです(特に断らない限り大学・短大は昼間部)。

2 学生生活費(平成30年度調査)  (単位:千円)

学費

生活費

大学

1,209

705

1,914

短大

1,090

538

1,628

専門学校

1,174

586

1,760

出典:学生生活調査、専修学校生生活調査

学費の内訳を見るとその主なものは授業料で、大学約93万円、短期大学約78万円、専門学校約79万円となっています。詳細は下表の通りです。

国の修学支援新制度で支援対象となるのは授業料及び入学料であり、学校種・設置者別、支援の区分別に上限額が決まっています。また、この2つ以外の学校納付金は支援対象にならないことに注意が必要です。

3 学費の内訳(平成30年度調査)  (単位:千円)

授業料

その他の学校納付金

修学費

課外活動費

通学費

大学

932

130

46

37

65

短大

779

176

49

8

77

専門学校

790

193

101

8

82

 

(3)誰が負担し、どのように調達しているか

(ア)家庭負担は半分程度

学生生活に必要な費用の半額程度は家庭からの給付、つまり保護者が負担しています。

4 費用の負担方法の内訳(平成30年度調査)

(単位:千円)

 

家庭からの給付

奨学金

アルバイト

定職収入他

大学

1,197

360

402

44

2,001

短大

893

433

339

53

1,718

専門学校

863

495

355

130

1,843

 

家庭では、教育費以外の支出を削る(節約)、預貯金や保険の取崩、保護者が共働きを始める、パートの時間を増やす、教育ローンを利用するなどして捻出しています(日本政策金融公庫調べ)。なお、学資保険で手当てしようとする場合、満期日と入学金等の支払期限との関係に注意が必要です。

(イ)学生自身による収入の確保

家庭からの給付以外は主に奨学金や本人のアルバイトとなっています。

奨学金は、JASSOの学生生活調査では大学で47.5%、短期大学で55.2%、専門学校で55.3%が利用しており、奨学金を利用することは何ら特別のことではありません。なお、このうち9割くらいがJASSOの奨学金を利用しています。

多くの奨学金には家計基準と成績基準があります。成績基準は学業への取組の結果であり、満たすように努力してほしいと思います。進学後の学業の基盤にもなります。これらの基準に該当するのであれば、奨学金が貸与の場合でも利用を検討することが適当と思います。

アルバイトも重要な収入確保の手段となっています。しかし学業に支障となっては元も子もありません。学業に支障を来さない限度とするとともに、就労や給与所得等に関係する様々なことも知るようにすると良いと思います。

なお、学校が学生を雇用するという例があります(例えば、東洋大学の独立自活奨学金制度)。ある高校で頂いた保護者向けの進学情報誌に収録されていた51大学中4大学が学内での雇用を紹介していました。これらの大学以外でも雇用している例がありますので、アルバイトを考えている人は大学等のホームページで調べたり、学生支援の窓口で相談したりしてはと思います。

 

3.国が行う修学支援の制度の概要

 

(1)新しい修学支援制度

この制度は2020年4月から国によって実施されているもので、大学等の授業料と入学金の減免、給付奨学金の支給の二本立てとなっています。実施初年度の2020年度においては、新入生108,000人、全体で272,000人に支援が行われました(時事通信)。また、JASSO資料では予約採用の候補者となった者が約98,000人おり、支援を受けた新入生の大半が高校在学中に申請していたことが分かります(大学等に入学後の申請も可)。

この二つの支援の要件は共通で、同時に両方の支援を受けることができます。なお、授業料・入学金は学校種・設置者別に、給付奨学金は設置者・通学形態別にそれぞれ支援額が定められており、また所得金額によって支援区分が分かれています。

注意しなければいけないのは学校が支援対象となっているかどうかです。入学(在学)する学校が文部科学省等によって支援対象として確認されている場合のみ学生は支援を受けることができます。大学・短期大学は98%の学校が対象となっていますが、専門学校は73%の学校が対象です。また、学校の確認は毎年行われ、新規に確認される学校、確認が取り消される学校が出ています。希望する学校が該当していることを文部科学省のホームページなどで確認することが重要です。

入学後は一定期間ごとに家計と学業成績等について審査(適格認定)があるので、本人は学業成績等が基準を満たすようにする必要があります。

(2)貸与奨学金

JASSOの貸与奨学金には、第一種、第二種、入学時特別増額の3種類があり、貸与を受けるためには所定の家計基準、成績基準を満たしている必要があります。以前はこれらの基準を満たしていても採用されないことがありましたが、最近は基準を満たした申請者は全員採用候補者となっています。多くの奨学生は高校在学中の予約申込みからの採用となっています。

5 令和3年度進学予定者の予約採用候補者数(貸与奨学金)

1

2

161,302

191,200

出典:JASSO令和2年度業務実績報告書

 

第一種は無利子、第二種と入学時特別増額は有利子(貸与期間中は無利子)ですが、有利子でも銀行等の教育ローンに比べれば低利です。

入学時特別増額は第一種又は第二種の初回の送金時(入学後です)に増額されて送金されるもので、金額は10万円から50万円までで10万円刻みで選択することができます。令和元年度の利用実績は約34,000人でした。労働金庫のつなぎ融資(入学時必要資金融資制度)と合わせることで、入学前の入学金や授業料の支払いに充てることが可能となります。なお、入学時特別増額は単独での利用はできないので、利用を希望する場合は給付奨学金申請者も含め、第一種又は第二種の貸与奨学金を一緒に申請することが必要となります。

貸与奨学金にも毎年度適格認定があり、学業成績等によっては廃止となることがあります。

貸与奨学金は返還の義務がありますが、返還困難となった場合のセーフティネットがありますので仕組みを知って対処することが必要です。

(3)採用基準等

 採用基準のうち学業基準は申込時までの成績、予約採用の場合は高校1年と2年の成績です。入学当初からそのつもりで勉強することが大事です。

家計による基準についてはJASSOのホームページでシミュレーションができます。また、返還に関してもシミュレーションができます。試してみることをお勧めします。

 

4.国の奨学金等以外の支援の仕組み

 

(1)奨学金

地方公共団体や民間団体による奨学金制度もあり、学校1,538校、地方公共団体931団体、公益財団等1,106団体が実施しています(JASSO調べ)。居住している都道府県や市区町村、進学を希望する大学等が実施していないか、実施している場合の利用条件等をあらかじめ調べることが大事です。特に大学等の場合、高校在学中に予約できる給付奨学金や授業料減免制度を持つ学校も多いので、入学金や授業料の納入猶予等などと合わせて調べておくと良いと思います。

(2)社会福祉制度としての支援

 社会福祉においても所得等が一定の条件に該当する家庭に対して大学等への進学に必要な費用に充てるため、以下の貸付金の制度があります。

・母子父子寡婦福祉資金貸付金制度

修学資金と就学支度資金の貸付

市区町村の福祉担当が窓口

・生活福祉資金貸付制度

教育支援費と就学支度費の貸付

市区町村の社会福祉協議会が窓口

両制度とも無利子です。詳細は居住する市区町村の窓口に早めに相談してください。

東京都の場合、高校3年生を対象に受験料や塾費用の貸付を行う「受験生チャレンジ支援貸付事業」(無利子)(条件、上限額あり)があり、大学等に入学すると返還が免除されます。

(3)国の教育ローン

 日本政策金融公庫が実施しています。奨学金と異なり貸付対象は保護者で、年間12万人程度が利用しています。融資限度額の中でまとまったお金を借りることができ、使途制限はありますが入学金をはじめ幅広い用途に使用できます。ひとり親家庭などには金利等の優遇措置があります。審査があるので、早めに相談し、申請することが必要です。電話による相談も受け付けています。

 

5.幾つかの利用上の留意点

 

(1)早めの準備の開始

  進学に要する費用は多額であり、その中には奨学金で対応できないものもあります。進学に向けた費用面の準備は、早期に始め、少額でも着実に行うことが適当です。WSOPの相談会等でも早めに聞いたので対応できるという感想を頂いています。

(2)進学する学校の選択

保護者は進学に当たって子供の学びたいという内容や将来の就職等を重視していますが、同時に学費も重視しています。

以上に紹介した金額は平均額で、進学先が国公立か私立かによって、自宅通学か自宅外通学かによって大きく変わります。

進学希望の学校を選択するに当たっては、学びたいことが本当に学べるかの検討が大事ですが、学費や自宅か自宅外かなどの生活面の費用なども検討材料の重要な一つとなると考えます。

6 国公私立別、自宅・自宅外別学生生活費(平成30年度調査)             (単位:千円)

 

国立

公立

私立

 

自宅

自宅外

自宅

自宅外

自宅

自宅外

大学

1,122

1,766

1,130

1,682

1,811

2,495

短大

895

1,341

1,531

2,079

専門学校

828

1,372

1,643

2,266

(注)自宅外はアパート・下宿を指す。

 

在学者数で見ると大学、短期大学、専門学校とも私立の学校に在学している者が最も多く、各学校種とも自宅外の方が高額となっています。私立大学等(自宅外)の学生生活費の内訳は下表の通りです。なお、東京圏ではこれより高額になることに注意が必要です。一方で学生寮に居住している場合は低額になることが多いので、学生寮を利用して生活費を抑えることもできると思います。

7 私立大学等の学生生活費(自宅外)の内訳(平成30年度調査)単位:千円)

学費

生活費

大学

1,395

1,100

2,495

短大

1,069

1,010

2,079

専門学校

1,170

1,096

2,266

 

(3)家庭内での情報共有

生徒は推薦などで進学したいという希望であるが、保護者がそのことをよく知らない、あるいは入学金等の支払時期を把握していない。保護者は奨学金を利用したいと思っているが生徒はそのことを知らない。こういうことを耳にします。

既に見たように学生生活費は高額です。保護者の負担の多寡は保護者の将来の生活にも関わる重要な問題ですし、貸与奨学金を多額に借りれば本人の将来の負担も大きくなります。

進学先の検討に際しては、これらのことを生徒、保護者ともによく理解し、相互の意思疎通、情報共有をすることが非常に大事です。

(4)予約採用への申込み

繰り返し述べてきましたように高校在学中に大学等に進学後の奨学金の予約申込みができ、現在では奨学生の多くが予約からの採用となっています。

予約申込みの時点では進学先が未定という人が多いと思います。この場合でも予約採用に申し込むことをお勧めします。なお、採用候補者になっても奨学金の利用を辞退することは自由です。

(5)支払い時期の把握と早めの相談・手続き

先にも触れましたが、入学前にも様々な費用の支払いが必要になります。何のために、幾ら、何時必要になるかをまとめておく必要があります。

奨学金は入学前には振り込まれません。JASSOの入学時特別増額の採用候補者が入学金等の支払いに労働金庫のつなぎ融資を利用する場合、支払い済みのものは対象になりません。支払時期の前に労働金庫の手続きが済んでいることが必要です。

社会福祉の貸付制度、教育ローンなどは審査があり、審査を通過しても実際の入金までに時間を要することがあります。このように実際に入金される時期、使途の制限などと支払い時期を把握し、早くから相談や申請を始めることが必要です。

(6)貸与奨学金の返還と返還への支援

JASSOの貸与奨学金の場合、貸与終了後7か月後(3月卒業の場合10月)に返還が始まります。返還開始の時期を忘れず準備することが重要です。また、返還困難時には返還の猶予や減額返還などのセーフティネットがあるので、困難になれば速やかにJASSOに相談し対処することが必要です。

地方公共団体や企業による返還支援も行われています。JASSOのホームページには地方公共団体による地方創生のための支援が27府県、57市町村が紹介されています。これら以外にも支援している地方公共団体があるので居住の都道府県などの制度を調べてみると良いと思います。

 

6.終わりに

 

以上説明してきましたように給付や貸与の奨学金、授業等の減免その他学業の修めることを支援する様々な制度があります。また、昨年来の新型コロナ感染症に対して、国や地方公共団体、学校や団体等が学生生活への支援を行っています。ベースとなる仕組みや事態に応じた取組を良く知って活用していただきたいと思います。そして奨学金をはじめとする支援を利用していることの意義や責任を自覚して勉学を全うしていただきたいと思います。

 

新型コロナ感染症の拡大は社会に様々な影響を与えており、将来に不安を感じている方もおられると思います。このような中、若者は進路を決めていかなければならず、そしてその若者の活躍が我が国の将来を左右すると言っても過言ではありません。人々に求められる能力は時代や環境によって変わっていく。このことを多くの人は実感していると思います。既に一つの専門性を獲得した専門高校の生徒が、学ぶことを通じて能力を開花させることに大きな期待が寄せられるゆえんです。

若者の進学応援プロジェクト(WSOP)は設立以来ホームページでの情報提供の他、相談会開催、高校等での説明会を行う等、微力ながら情報の周知に努めています。参加した方々からは役に立った、もっと早く知りたかったという声を頂いています。

昨年春には多くの高校が休校やオンラインによる授業等の実施を余儀なくされ、従来であれば支障なく保護者や生徒に届いていた奨学金等の情報が届かなかったという例も見られました。今も依然として困難な状況下にありますが、高等学校のご努力などにより必要な情報が高校生や保護者に届き、将来の進路を開いていけることを願っています。

WSOPジャーナル 特別号(7号)
〈この特別号は全国高等学校校長協会家庭部会理事会の資料として作成しました。〉 
 

進学を希望している生徒へのアドバイス

(新修学支援制度やコロナ禍で大学等進学する学生への経済支援等について)

20215月8日

 

令和2年度から住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生に対し、給付奨学金と授業料減免制度を拡充する新修学支援制度が導入されました。27万人の学生がこの新制度の適用を受け、文科省の推計では住民税非課税世帯の進学率は約10%も上昇しているそうです。

一方、コロナ感染が広まり、大学生協の調査では学生への仕送り、アルバイト収入ともに減少し、厳しい状況で学業を続けているとの報告もあります。

こういった激動の時代にこそ、進学を希望している生徒に正確で適切な支援情報を知り、充実した学生生活を過ごして頂きたいと思います。

一般的な学生支援制度策とコロナ禍での支援制度等の紹介と、これらの支援制度を利用するに当たって生徒の皆さんへのアドバイスです

なお、WSOPのHPにもこれらの支援制度等の紹介と注意すべき点について掲載しています。 

 

1.在籍する学校にちゅうちょしないで先ず相談

「大学等の奨学金等の申込みは先ず高校の窓口

奨学金等の支援制度の多くは学校の窓口から申し込みます。今や給付奨学金や貸与奨学金等の申込みの多くは高校で申込む予約採用になっています。

「進学後は進学先の大学等からの情報に常に注目」

進学先の学校には学校独自の救済制度や国や色々な団体からの支援制度についての情報が集まります。コロナ等の影響で大学等への授業料の支払いに不安がある場合や自分の状況に合う利用可能な支援制度(下記に現行の一般的な制度を掲載)等について進学先の学校に相談する事をお勧めします。「文科省は大学等に弾力的な取扱いやきめ細かな配慮などを求める通知を送信」

2.極力早く申し込む

支援策には申込みの期限がある場合や申し込んでから受給まで時間がかかる場合があります。申込みは出来るだけ早く行うことをお勧めします。

3.奨学金の返還についての猶予制度等の企業等の支援策も調べ、活用

現在、奨学金等の返済を行っている人が新型コロナウイルスの影響等で返還が困難になった場合への対策として、返還猶予の基準・手続等の緩和や、企業によっては一部返還金の支援を行っている所もあります。これらの情報にも注視してください。

 

以下は、経済的な支援制度についての概略です。

<困難な状況におかれている学生等が利用可能な主な制度等>

 ①~④の支援制度の申込先は、主に学校の担当窓口です。進学後もコロナ禍で家計が急変した場合も緊急的に申しこむことができますので必ず進学先の大学等の窓口へ相談してください。

① 高等教育の修学支援新制度 【非課税世帯及びそれに準ずる世帯の方】

概要:住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯を対象に,学生生活に必要な生活費等をカバーする給付型奨学金授業料等減免による支援を行う制度です。

② 日本学生支援機構の貸与型奨学金 【幅広い世帯の方】

概要:日本学生支援機構の貸与型奨学金では,第一種(無利子)奨学金及び第二種(有利子)奨学金による支援があります。貸与額は選択可能です。

③各大学等の授業料納付猶予・延納や各大学独自の授業料等減免等【制度等により異なる】

概要:経済的に困難な方については,多くの大学等で,授業料の納付猶予や延納等を行っています。また,各大学等が独自に授業料等減免や奨学金の制度を持っている場合もあります。

④自治体独自の奨学金や民間奨学金等【制度等により異なる】

概要:自治体が独自に奨学金等の制度を持っている場合もあります。また,民間の奨学金についても,申込みが可能な場合もあります。(こうした支援については,日本学生支援機構の Web ページでも一部紹介しています。)

<修学支援以外の制度のうち,経済的に困難な場合に活用できる制度等>

⑤生活福祉資金貸付金(緊急小口貸付貸付等の特例貸付) 【幅広い世帯の方】

概要:新型コロナウイルス感染症の影響により,収入の減少があり,緊急かつ一時的な資金を必要とする世帯の方に対し, 無利子・20 万円以内で貸付を行う等の制度です。

問合先:お住まいの市区町村の社会福祉協議会等又は全国の労働金庫(ろうきん)

⑥生活福祉資金貸付金(教育支援資金)【低所得世帯】

概要:低所得世帯を対象として,大学等に修学するために必要な経費について貸付をうけられる制度です。また,入学に際し必要な経費についての貸付も行っています。

問合先:お住まいの市区町村の社会福祉協議会

⑦母子父子寡婦福祉貸付金(就学支度資金・修学資金)【母子・父子・寡婦家庭の方】

概要:母子・父子・寡婦家庭の方が,就学するために必要な資金の貸付を受けられる制度です。

問合先:お住まいの都道府県・指定都市・中核市の福祉事務所等のひとり親世帯関係施策担当

<その他>

⑧日本政策金融公庫の教育ローン 【幅広い世帯の方】

概要:大学等に入学・在学する方の保護者に対し,学生等1人あたり350万円以内の貸付を行うものです。

問合先:日本政策金融公庫(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html

※現時点での主なものを掲載しており,令和2年にはコロナ禍の学生24万人に対し学生支援緊急給付金の支援がありました。文科省を含め関係省庁の今後の施策には注視する必要があります。

 

WSOPジャーナル 6
                                                       
2020915

新修学支援制度の対象校発表

 

911日、文部科学省から2020年度から実施されている給付奨学金と授業料減免を柱とする新修学支援制度の令和3年度の対象校が発表されました。これによると、大学・短期大学は1,082校中1,060校(確認割合98.0%)、高等専門学校は57校中57校(100%)、専門学校は2,688校中1,967校(73.2%)が対象校として確認されています。なお、新設予定の学校については追って確認審査を行う予定とされています。

同時に、これまで対象校として確認されていた大学等のうち6校が確認を取り消されています(下表参照)。これらの学校に在学する学生・生徒で対象となっている学生・生徒は、確認の取消しの後においても新制度の支援を受けることができます。

 

この確認を受けていない大学等に進学した場合、授業料減免や給付奨学金の対象になることはできません。例えば、日本学生支援機構の給付奨学金の予約採用に申し込み、予約採用の候補者に決定していても、進学した学校が確認を受けていない場合、授業料減免も給付奨学金の給付も受けることはできません。

受験を考えている大学等が対象校として確認されているかを学校のホームページ等で確認してください。特に専門学校は4校中1校が確認を受けていないという状況にありますから、慎重に確認してください。昨年本プロジェクトが相談を受けた中にも、進学を考えている学校が確認校ではなかったという事例がありました。学校からの口頭での説明を鵜呑みにせず、自分で確認をするようにしてください。なお、文部科学省のホームページでも確認できます。

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/1420041.htm

 

 また、新修学支援制度の対象となろうとする学校は申請書類を文部科学省等に提出しますが、確認された場合、学校は申請書類の内一定のものを公表することが法令によって義務付けられています。

 

大学等の修学支援に関する法律施行規則

(確認の通知等)

第七条 文部科学大臣等は、確認をしたときは、遅滞なく、その旨を当該確認を受けた大学等の設置者に通知するものとする。

2  確認大学等の設置者は、前項の規定により確認をした旨の通知を受け、又は第五条第三項の規定により更新確認申請書を提出したときは、遅滞なく、当該確認に係る確認申請書又は当該更新確認申請書(いずれも様式第二号の一から様式第二号の四までの申請書の部分に限る。)をインターネットの利用により公表するものとする。

 

公開されている申請書類を見ると、入学金や授業料の金額の他、

〇大学の場合は、入学定員と入学者数、収容定員と在学生数、学修成果の評価及び卒業の認定の基準に関すること、卒業者数と卒業後の進学者数及び就職者数など、

〇専門学校の場合は、生徒総定員、生徒実員、成績評価の基準・方法、卒業・進級の認定基準、直近の年度の卒業者数・進学者数・就職者数、中途退学の現状など

進学を考えている高校生にとって関心の高い情報が載っています。

受験する候補になっている学校の情報を調べてみてはどうでしょうか。

どこに載っているか探しにくい場合は、文部科学省等のホームページを見てください。各学校が公開しているホームページが載っています。同様に私立の専門学校の場合は、各都道府県のホームページで調べられます。

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/1421393_00001.htm

 

確認を取り消された大学等の一覧(令和2911日)

学校種

学校名

所在地

大学

東北女子大学

青森県弘前市

大学

上野学園大学

東京都台東区

短期大学

東北女子短期大学

青森県弘前市

短期大学

東九州短期大学

大分県中津市

専門学校

北海道福祉教育専門学校

北海道室蘭市

専門学校

北斗文化学園インターナショナル調理技術専門学校

北海道室蘭市

専門学校

札幌医療リハビリ専門学校

北海道札幌市

専門学校

明日佳幼児教育専門学校

北海道札幌市

専門学校

神奈川柔整鍼灸専門学校

神奈川県相模原市

専門学校

中部美容専門学校名古屋校

愛知県名古屋市

※本確認の取消しの際、高等教育の修学支援新制度の対象者として認定された者が在学しているときは、当該者については、確認の取消しの後においても新制度の支援を受けることができる。(大学等における修学の支援に関する法律第16条、独立行政法人日本学生支援機構法第17条の2第1項)

―了―

WSOPジャーナル 第5

WSOPジャーナル 5号

2020815

新型コロナウイルスの影響で経済的に困難となった学生等への大学独自の支援策の現状について

コロナ禍により影響を受けた学生への支援措置―国による緊急支援金の支給、奨学金の採用の弾力化、大学が行う授業料減免への助成など―については、これまでもホームページやこのブログにおいて紹介してきました。これらの施策、特に大学の取組を促したものについてどの程度学生に届き、修学の継続に役立っているのでしょうか。

84日の朝日新聞朝刊に、大学が独自に講じた支援に関する調査結果が載っていました。その内容を簡単に紹介しつつ、具体的にどのような支援策なのか幾つかの実例を紹介します。

(調査は624日~727日に国公私立の768大学対象に実施し、652大学から回答)

 

〇学費納入期限の延長・分納許可・・・82%

〇支援金の給付・・・65%(実施決定済又は実施の方向の大学)

実施決定63%(全員対象44%、一部対象19%)

実施の方向2%(全員に実施方向1%、一部に実施方向1%)

検討中6%

実施しない25%

未定・未回答5%

〇学費の減額や免除・・・29%(国立62%、公立35%、私立23%)

〇大学がアルバイトを募る、紹介する・・・30%

〇学費返還を決めたのは一部返金も含め2%で、多くは、オンライン授業が難しい実技の指導が必要な芸術系や医療系の大学。

 

学生生活費の大きな部分を占め、かつ一度入学してしまえば個々の学生や家庭の努力で節約できないのが学費です。日本学生支援機構の調査(平成30年度)によれば、大学昼間部の年間学生生活費(全国平均)191.4万円中授業料が93.2万円、その他の学校納付金が13.0万円となっています。この学費について、8割以上の大学が納入期限の延長や分納を認め、また約3割の大学が減額や免除を認めると回答しています。調べると以下のような例があります。

〈東京電機大〉全学生対象に、学生生徒等納付金(入学金を除く)のうち、令和2年度前期の学生生徒等納付金の約10%相当額を減額(後期納付金を減額)(4/28

学生への支援金については、実施決定済み又は実施の方向と回答した大学は回答大学の2/3に当たる65%でした。これらの大学の内半分弱の大学は全学生を対象に支給決定済み又は検討中としています。

今回のコロナ禍により、講義がオンラインによって実施されることとなったことから、その環境整備も兼ねて支援する大学も多いようです。具体的には以下のような例がありました。

〈駒澤大学〉受講環境整備等のために「緊急修学支援金」 5万円を給付(5/1

〈芝浦工業大学〉家庭におけるPC環境整備費及びネット通信費の補助として、全学生に対し前期オンライン授業対応の為の一律6万円の臨時奨学金(給付)(支給方法は後期の授業料から6万円を減額)(4/22

〈立教大学〉オンライン受講を含めた学修環境を整え、安心して授業を受けられるための措置として、全ての学生に対して一律5万円の「学修環境整備奨学金」を給付(5/25

〈神奈川大学〉オンライン授業受講に係る学修環境を整える修学支援金として、一律5万円を給付(4/24

一部の学生を対象とするものとしては以下のようなものがありました。

〈日本大学〉災害等不測の事態により学費等の支弁が困難な学生を対象とした日本大学独自の給付奨学金制度を適用し、1人当たり10万円、対象は1万人、総額10億円を給付(5/26)。

〈早稲田大学〉「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急支援金」制度を設立し、約3,000名を初回の対象として、緊急支援金10万円を支給(5/1)。

〈関西大学〉①」一人暮らしの学生(下宿生・寮生、外国人留学生・留学生別科生)へ一律5万円を支給。②「関西大学家計急変者給付奨学金」の追加募集実施。③「新型コロナウイルス感染症家計急変給付奨学金」を新設し、家計が著しく急変したことにより修学が困難になった学生に奨学金(年額12万円)を給付。(4/30

 ここに掲げた大学は一例であり、多くの大学で同様の支援策を講じ、また経済事情急変に対応して奨学金等の支援を講じています。

学内業務に学生を雇用することは、本ブログ第11号で紹介したように、幾つかの大学では以前から行っています。金額の多寡はあれ、継続的な収入があれば学生の安心につながるでしょう。

 

朝日新聞の記事を見ると、ほぼ全ての大学が大学独自の支援を行っているのではないかと思われます。

これまでもWSOPは、影響を受けている方は躊躇なく在学する学校に相談することを勧めしてきました(例えば、WSOPジャーナル第3号)。これからも、国の支援策や奨学金への申込なども含め学校に相談することが大事です。

 

コロナ禍の中でどう学業を続けるのか。今後も、来年度の新入生も含め経済的に困難な学生が多く現れる可能性があります。現在行っている大学独自の支援策とその継続等のため、卒業生などを対象に募金を進めている大学もあります。また、近隣の方々などの支援を頂いて食料等の配付をしているという取組を紹介している記事が最近も見られます。

様々な支援が広がり、そして継続的に行われることを期待したいと思います。  ―了―

 

WSOPジャーナル 第4号Pジャーナル 第4(版)

2020615

 

令和2年度第2次補正成立 大学等の授業料減免への支援拡大

 

612日、令和2年度の第2次補正予算が成立しました。教育関係では学校の臨時休業に伴う児童生徒等の学びの保障に774億円、大学・高専・専修学校の遠隔授業の加速に73億円の他、困窮学生等に対する支援に153億円などが計上されています。

この153億円の中心は各大学等が行う独自の授業料等の軽減措置への支援の拡大で、国立大学分45億円、私立大学分が94億円となっています。第1次補正予算で、大学が独自に行う授業料減免措置への支援として7億円(国立大3億円、私立大4億円)が計上されていましたが、今回大幅に増額されました。私立大学の場合、補助率も2/3へ引き上げられます。

大学が、この予算の増額と私立大学に係る補助率引き上げを受け止め、積極的に学生支援に取り組むことを期待したいと思います。学生の皆さんも是非学校に問い合わせてください。

 

 令和2年度から新しい修学支援制度を実施することが決定しており、当初予算に授業料の減免に2,920億円、給付奨学金に2,354億円が計上されていましたが、新型コロナ感染症の拡大への対応として、第1次補正(4/30)、同予算の予備費利用(5/19)、そして今回の第2次補正(6/12)と数次に渡って困窮した学生への支援策が打ち出されたことになります。

予算措置に加えて、新修学支援制度への申請時期や給付奨学金の支給開始の特例、学生支援緊急交付金のラインを用いての申請可などの方策も採用されています。

支援策が数次に渡って追加されてきたこともあり、分かりにくいと感じる方もおられるでしょう。当初予算から第2次補正までに計上されている予算を整理すると、下表のようになります。

(単位:億円)

当初予算

1次補正予算

第1次補正予備費

第2次補正予算

授業料等減免(注1

2,920

奨学金

12,795

給付奨学金

2,354

貸与(無利子)奨学金

3,114

貸与(有利子)奨学金(注2

7,327

 

学校が行う授業料減免の助成

7

 

144

国立大

       4

 

45

公立大(注3

私立大(注4

     3

 

94

国立高専

0

2

専門学校(注5

3

学生支援緊急交付金

 

   531

合計

15,715

7

531

144

1:地方交付税積算額(公立大学等129億、私立専門学校264億)を含む

  公立大学分は全額地方交付税措置、私立専門学校分は国庫負担1/2あり

2:有利子奨学金について、一定の場合返還時の利子を国が補てんする仕組みを導入

3:地方交付税による対応につき、金額は不明

4:補助率が1次補正1/2、2次補正2/3で、事業費ベースでは147億円となる

4:調査研究事業のため、当該予算額には調査研究の経費等を含む

これらについては、文部科学省の「新型コロナウイルスの影響を受けている学生への緊急対応措置―学生の学びの支援緊急パッケージー」でも分かり易く説明されています。

https://www.mext.go.jp/content/20200529-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf

令和2年度から新修学支援措置を導入することが決定し、授業料等減免への国庫負担、給付奨学金制度の制度が関係者に共通理解され、その予算も確保されていました。偶然とは言え、この仕組みの検討・構築が終わっていたことが、補正予算等を用いた追加的な支援策の実施を容易にしたのではないでしょうか。遠隔授業も、GIGAスクール構想が政府で決定、予算措置もされ、各学校に周知されていたことが、実行する障害を小さくしたのではないかと思います。

今後、今回の取組・経験を今回限りのものとせず、伸ばしていかれることを期待しています。

 

修学支援策には文部科学省が主管するものの他、他省庁が主管する関連施策もあります。施策と問合先を下に紹介します(WSOPHP又はWSOPジャーナル第3号も参照)。

<修学支援以外の制度のうち,経済的に困難な場合に活用できる制度等>

〇生活福祉資金貸付金(緊急小口貸付貸付等の特例貸付) 【幅広い世帯の方】

問合先:お住まいの市区町村の社会福祉協議会等又は全国の労働金庫(ろうきん)

〇生活福祉資金貸付金(教育支援資金)【低所得世帯】

問合先:お住まいの市区町村の社会福祉協議会

〇母子父子寡婦福祉貸付金(就学支度資金・修学資金)【母子・父子・寡婦家庭の方】

問合先:お住まいの都道府県・指定都市・中核市の福祉事務所等のひとり親世帯関係施策担当

〇住居確保給付金 【独立生計・収入減の方】

問合先:お住まいの都道府県・市・区等の自立相談支援機関又はコールセンター 0120235572

<その他>

〇特別定額給付金(総務省)【住民基本台帳に記録されている方】

問合先:特別定額給付金コールセンター0120-260020(フリーダイヤル)又は03-5638-5855

〇日本政策金融公庫の教育ローン 【幅広い世帯の方】

問合先:日本政策金融公庫(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html

〇雇用調整助成金の特例措置 【雇用主】

 

WSOPジャーナル 第3号WSOPジャーナル 第3号

新型コロナウイルスの影響で経済的に困難となった学生等への支援策と申込み等について

20205月7日

430日付けで、文科省から大学等の学校や各都道府県等に対して、学生等への修学支援について学生一人一人に確実に情報が行き渡るよう適切に周知すること、授業料等の納付猶予、分納、免除及び減額に関する各大学等の制度等を踏まえて弾力的な取扱いやきめ細かな配慮などを求める通知を出されました。

この通知の中で、困難な状況におかれている学生が利用可能な制度について関係省庁の制度も含めて取りまとめられています。 

以下に、文部科学省の通知で取り上げられている支援制度等の紹介とこれらの支援制度を利用するに当たって注意すべき点について掲載しました。より詳細なことは文部科学省のHPをご覧になるか、学校等の担当窓口にご相談ください。 

なお、WSOPのHPにもこれらの支援制度等の紹介と注意すべき点について掲載しています。 

 

1.在籍する学校にちゅうちょしないで先ず相談

 奨学金等の支援制度の多くは学校の窓口から申し込みます。学校には学校独自の救済制度や国や色々な団体からの支援制度についての情報が集まります。更に54日、安倍首相からアルバイト学生等への生活支援の為に更なる生活支援について検討すると発言がありました。

 更なる生活支援策も含め、自分の状況に合う利用可能な支援制度(下記に現行の一般的な制度を掲載)等について学校に相談する事をお勧めします。

2.極力早く申し込む

支援策には申込みの期限がある場合や申し込んでから受給まで時間がかかる場合があります。申込みは出来るだけ早く行うことをお勧めします。

3.奨学金の返還についての猶予制度等の支援策も調べ、活用

現在、奨学金等の返済を行っている人が新型コロナウイルスの影響等で返還が困難になった場合への対策として、返還猶予の基準・手続等の緩和や、企業によっては一部返還金の支援を行っている所もあります。これらの情報にも注視してください。

 

以下は、430日付けの通知に紹介されている支援制度についての概略(抜粋)です。

<困難な状況におかれている学生等が利用可能な主な制度等(4月 30 日時点)>

 ①~④の支援制度の申込先は、主に学校の担当窓口です。

① 高等教育の修学支援新制度 【非課税世帯及びそれに準ずる世帯の方】

概要:住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯を対象に,学生生活に必要な生活費等をカバーする給付型奨学金と授業料等減免による支援を行う制度です。

② 日本学生支援機構の貸与型奨学金 【幅広い世帯の方】

概要:日本学生支援機構の貸与型奨学金では,第一種(無利子)奨学金及び第二種(有利子)奨学金による支援があります。貸与額は選択可能です。

③各大学等の授業料納付猶予・延納や各大学独自の授業料等減免等【制度等により異なる】

概要:経済的に困難な方については,多くの大学等で,授業料の納付猶予や延納等を行っています。また,各大学等が独自に授業料等減免や奨学金の制度を持っている場合もあります。

④自治体独自の奨学金や民間奨学金等【制度等により異なる】

概要:自治体が独自に奨学金等の制度を持っている場合もあります。また,民間の奨学金についても,申込みが可能な場合もあります。(こうした支援については,日本学生支援機構の Web ページでも一部紹介しています。)

<修学支援以外の制度のうち,経済的に困難な場合に活用できる制度等>

⑤生活福祉資金貸付金(緊急小口貸付貸付等の特例貸付) 【幅広い世帯の方】

概要:新型コロナウイルス感染症の影響により,収入の減少があり,緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯の方に対し, 無利子・20 万円以内で貸付を行う等の制度です。

問合先:お住まいの市区町村の社会福祉協議会等又は全国の労働金庫(ろうきん)

⑥生活福祉資金貸付金(教育支援資金)【低所得世帯】

概要:低所得世帯を対象として,大学等に修学するために必要な経費について貸付をうけられる制度です。また,入学に際し必要な経費についての貸付も行っています。

問合先:お住まいの市区町村の社会福祉協議会

⑦母子父子寡婦福祉貸付金(就学支度資金・修学資金)【母子・父子・寡婦家庭の方】

概要:母子・父子・寡婦家庭の方が,就学するために必要な資金の貸付を受けられる制度です。

問合先:お住まいの都道府県・指定都市・中核市の福祉事務所等のひとり親世帯関係施策担当

<その他>

⑧特別定額給付金(総務省)【住民基本台帳に記録されている方】

概要:基準日(令和2年4月 27 日)において,住民基本台帳に記録されている方を給付対象者,その方の属する世帯の世帯主を受給権者とし,給付対象者1人につき 10 万円を給付する制度です。

問合先:特別定額給付金コールセンター0120-260020(フリーダイヤル)又は03-5638-5855

⑨日本政策金融公庫の教育ローン 【幅広い世帯の方】

概要:大学等に入学・在学する方の保護者に対し,学生等1人あたり350万円以内の貸付を行うものです。

問合先:日本政策金融公庫(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html

⑩雇用調整助成金の特例措置 【雇用主】

概要:新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業主が,休業手当を払う場合,学生アルバイトも含む非正規雇用も対象となる特例。

 

※現時点での主なものを掲載しており,関係省庁の施策を含め,今後随時更新される。

 

WSOPジャーナル 第2号WSOPジャーナル 第2

20204月30日

補正予算で新型コロナウイルスによる学校教育への影響に対策

大学独自の授業料減免等に国庫補助

47日、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため緊急事態宣言が発出され、16日に全国に拡大されました。この宣言が出される前から、不要不急の外出や様々な店舗の営業自粛の要請などによって国民生活には影響が拡大しつつあり、また学校の臨時休業等が続いています。

生活はどうなっていくのか、学校の授業はどうなるのかなどの不安を多くの人が持っていると思います。

本日(430日)令和2年度補正予算が可決・成立し特別定額給付金の給付等が決定しましたが、以下のような就学の支援、学校の教育・学習活動の支援の予算も計上されています。内容を簡単に紹介します。

1. 家計が急変した家庭の学生に対する支援(大学等の授業料減免等の支援)

2. 学校休業時における子供たちの「学びの保障」(大学等での遠隔授業の推進、小・中学校における端末機器の11台整備など)

 

1.家計が急変した家庭の学生に対する支援    7億円

(趣旨)新型コロナウイルス感染症の影響によって家計が急変した世帯の学生に対する授業料減免等の支援を実施する。

今年度からいわゆる修学支援制度(給付奨学金及び授業料等の減免)が始まっており、一定の基準に該当する学生はこの制度の適用を受けることができます。新型コロナウイルス感染症の影響によって家計が悪化した場合でも同じで、326日付で文部科学省から取扱いが大学等に通知されています。また、同日付で「新型コロナウィルス感染症の影響で学費等支援が必要になった学生のみなさんへ」というタイトルで、学生に当てたお知らせが同省HPに掲出されています。

今回の補正予算は、この修学支援制度に加えて、大学が独自に授業料減免等を行う場合に国が助成するものです。学生生活に要する費用の1/5程度はアルバイトによって賄われていますが、多方面にわたる自粛要請によって学生のアルバイト収入にも影響が出ていると言われています。今回の支援措置によって、既存の修学支援制度の対象にならない学生等などの就学の継続が支援されることが期待できます。

 

2.学校休業時における子供たちの「学びの保障」

2-1 大学等における遠隔授業の環境構築の加速による学修機会の確保  27億円

(趣旨)大学、高等専門学校、専修学校において、遠隔授業の設備及び体制の整備を行い、デジタル技術を活用した高度な教育が提供できる環境の整備を推進する。

 

大学等における授業は一度に大勢の学生が教室に集まるものであり、感染の拡大につながる恐れがあります。そのため、大学等においては授業の開始時期を遅らせています。文部科学省の調査(4月24日発表)では大学・短大の約89%が延期を決定専門学校では約90%が延期又は遠隔授業を決定済み又は延期を検討中となっています(※)。

延期による教育・学習の遅れをどのように緩和し、取り戻すかが課題であり、学生にとっても心配です。文部科学省から、多様なメディアを高度に利用して行う授業(遠隔授業)の活用などによる学修機会の確保に留意することが通知されています。上記と同じ文部科学省調査では、大学・短大は約99%、専門学校では約78%が実施又は実施を検討中となっています(※)

  今回の補正予算は大学等による遠隔授業の実施を後押しするもので、学生が自宅等において支障なく授業を受講できる環境の構築が一層進むものと思われます。さらに、今後所謂アクティブラーニングにおいてもこの環境は活用され、学生の学修が改善していくことが期待されます。

(※)それぞれ回答のあった大学等に占め割合

 

2-2 GIGAスクール構想の加速による学びの保障  2,292億円

(趣旨)「GIGAスクール構想」におけるハード・ソフト・人材を一体とした整備を加速することで、緊急時においてもICTの活用により全ての子供たちの学びを保障できる環境を早急に実現する。

現在、多くの小中学校等が臨時休校となり、予定通りの授業が実施できない状態となっています。文部科学省から学校に対して、ICT等も活用した家庭学習と登校日の設定その他の指導上の工夫により児童生徒の学習を支援するための必要な措置を講じることが求められています。しかし、「学校ICT環境の整備は遅れており」、加えて「自治体間の格差も大きい」という問題があります。つまり、多くの学校ではICTを活用した学習支援ができる状況にはないのではないでしょうか。

補正予算により、GIGAスクール構想(注)が前倒しされ、小学校1年生から中学校3年生の全学年について11台の端末機器が整備されます。また、ICTの利活用においては、校内環境の整備だけでは不十分で、家庭での通信環境確保も課題とされていました。補正予算には、家庭学習のための通信機器整備支援(貸与用モバイルルーターの整備)も含まれています(147億円)。

今回の補正予算によって学校や家庭における環境整備が促進され、今よりも多くの子供たちが遠隔授業等を受けることができるようになることが期待されます。

 

(注)GIGAスクール構想(GIGAとは「Globaland Innovation Gateway for All」の略)

児童生徒11台端末(高等学校については3クラスに1クラス分)及び高速大容量の通信ネットワークを、令和元年度から令和5年度までの5年間で一体的に整備する計画 。令和元年度補正予算に2,318億円が計上されているとともに、地方交付税に毎年1,805億円措置されている。

―了―

令和2年度令和  

WSOP(若者の進学応援プロジェクト)ジャーナル 第1号WSOP(若者の進学応援プロジェクト)ジWSOPャーナル 第1号

WSOPジャーナル 第1号 

令和2年3月27日

 

2019年度の事業計画では情報紙を定期的に発行することとしていました。その第1号をお届けします。

令和2年4月から、ご承知のように高等教育の修学支援制度が始まります。令和2年度予算においては、この関係の予算が計上されているのをはじめ、修学支援関係の予算が大幅に拡充されています。

令和23月27日に国会にて令和2年度予算が可決され、正式に決定しましたので、高校・大学等の修学支援関連予算について、説明します。

 

修学支援上、大学等に入学しようとする前の段階からの取組が重要と考えます。もちろん経済的な支援だけでは進学の意欲を持ってもらうことは難しいかもしれません。しかし、お金がなければ進学できないこと事実です。今回は、高校段階も含めた修学支援についての予算も紹介します。

 

高等教育(大学等)

{C}1.    {C}高等教育の修学支援新制度(社会保障関係費として内閣府予算に計上し文科省で執行)

4882億円(新規)

{C}(1)  {C}授業料等減免制度の創設 2528億円(新規)

各大学等が授業料・入学金の減免を実施し、その減免に要する費用を国から措置する。

(非課税世帯に準ずる世帯の学生等に対しては、非課税世帯の額の3分の2の額又は3分の1の額を減免する。)

ただし、この制度の対象となるには、大学、短期大学、専門学校はそれぞれ一定の要件に該当することが文部科学大臣等によって確認される必要があり、文部科学省の公表(令和2年1月16日現在)では、大学・短期大学1054校(全大学・短期大学の97.1%)、高等専門学校57校(100%)、専門学校1690校(62.3%)が対象機関となっています。

 

(2)給付型奨学金の支給    2354億円(新規)

 学業に専念するため、必要な学生生活費を賄えるよう支給する。

(非課税世帯に準ずる世帯の学生等に対しては、非課税世帯の額の3分の2の額又は3分の1の額を支給する。)

 

 

 

 

2.貸与奨学金(貸与基準を満たす希望者全員に貸与を引き続き確実に行う。)

貸与奨学金

  無利子奨学金 3114億円 518000

  有利子奨学金 7327億円 833000

 

2.高校生等への修学支援

(1)高等学校等就学支援金等

①高等学校等就学支援金4253億円(3710億円)

  この制度は、一定の所得等の基準に該当する世帯の高校生に対して授業料に当てるため就学支援金を支給するものです。仕組みとして、該当生徒全員に支給される金額(年額で118800円)と私立高校等の生徒に所得要件に応じて加算支給される額(年額で最大297000円)とに分かれています。

この支援金は返還不要です。

令和2年度から、年収の目安約590万円未満の世帯の生徒への加算額が引き上げられます(297000円→396000円)。

高等学校・特別支援学校の専攻科の生徒への修学支援2億円(新規)

③高校で学び直す者に対する修学支援 3億円(1億円)

 

(2)高校生等奨学給付金 136億円(139億円)

この制度は、授業料以外の教育費負担を軽減するため、生活保護世帯、住民税非課税世帯の生徒を支援するものです。

授業料以外の教育費とは、教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、教科外活動費、生徒会費、PTA会費、入学学用品費、修学旅行費等になるとされています。 

この給付金は返還不要であり、平成30年度においては約413000人が給付の対象となっています。

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複雑な奨学金等の情報を高校生、保護者、先生の皆様に分かり易くお伝えします。

進学を諦めてはいませんか?また、就学を続けていくことが困難移なっていませんか?是非、このホームぺージを活用しご相談下さい。我々と一緒に問題を解決していきましょう。

大学等で奨学金を受けている学生の多くは高校在学中に申し込んでいます。安心して進学するには早い時期での対応が何より大事です。

奨学金を借りて就学するには、在学中の奨学生としての適格性が求められます。学校にもよりますが11月頃から確認作業が始まります。

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ごあいさつ

若者の進学応援プロジェクト

進学や奨学金の返還について、プライバシー等を気にせず、安心して相談したり、必要な情報を得られる第三者機関が必要であることから、小林東京大学教授遠藤日本学生支援機構理事長(東京都教育委員)等を発起人として、北原筑波大学元学長梶山九州大学元学長及び馬城日本製紙株式会社社長株式会社中村建築設計室社長等の教育関係や経済界の皆様からの賛同を得て、この法人は設立されました。(役職名は設立時)