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(平成30年7月3日記載)
ワンポイントアドバイスシリーズ
進学費用とその捻出について
高校生の保護者の皆様へ
―進学に要する費用について考えてみましょうー
子供が大学に行きたいと言った時、大学生活に幾らかかるかご存知でしょうか。
1.〈進学に際して必要となる経費〉
受験料等の費用、入学金等・・・政策金融公庫の資料から
2.〈在学中に必要となる経費(1)〉・・・平均
3.〈在学中に必要となる経費(2)〉・・・自宅から?自宅外から?
4.〈在学中に必要となる経費(3)〉・・・東京の私立?地方の国立?
5.〈家庭は、大学教育に必要な経費をどのように賄っているか〉
節約・貯金や保険の取り崩し・・・・政策金融公庫の資料から
出典:【学生生活調査】(日本学生支援機構 平成28年度調査)及び【教育費負担の実態調査】 (日本政策金融公庫 平成29年度調査)
1.〈進学に際して必要となる経費〉
大学入学費用は全国平均で約85万円
大学に入学するためには、大学を受験し、合格した大学や入学する大学に入学金等を納入することが必要です。受験の段階から含めて幾ら要しているでしょうか。
日本政策金融公庫は「教育費負担の実態調査(平成29年)」※によると、平成29年4月に大学に入学した者の入学費用は全国平均で、約85.2万円となっています。
この内訳をみると、受験費用(受験料、受験のための交通費・宿泊費)31.2万円、学校納付金44.2万円、入学しなかった学校への納付金10.0万円となっています。受験費用が大きな割合を占めていることになります。
学校に自宅外から通学する場合、自宅から通学する場合に比べて費用が掛かります。自宅外から通学する場合の平均額は、入学費用と自宅外通学を始めるための費用(アパートの敷金や家財道具の購入費など)の合計は全国平均で116.6万円、うち自宅外通学を始めるための費用は37.5万円となっています。自宅外からと言っても、地方から首都圏等の学校に進学した場合に限りません。北海道の例を見るまでもなく、地方では同じ県内に進学した場合でも自宅外となることが多くあります。
※調査対象は、25歳以上64歳未満の男女で、かつ高校生以上の子供を持つ保護者で、各県100人合計4700人を対象。調査結果の数字は人口等に応じて重みづけされたもの。
2.〈在学中に必要となる経費(1)〉全国平均
子供さんが大学に行きたいと言った時、授業料その他で大学生活に幾らかかるかご存知でしょうか。
ここでは、いくつかの面から現状を御紹介します。
入学後、毎年必要となるのは平均約188万円家庭は約118万円を負担
子供さんが大学、短期大学、専門学校に進学した時、どれくらいの費用が毎年必要でしょうか。学費(授業料や実験実習費などの学校納付金、教科書や参考図書代などの修学費、通学費)、そして日々の生活費(食費・住居光熱費など)が必要になります。もちろん、どの大学に行くのか、自宅から通学できるのかできないのかなどによって大きく変わります。
きわめて大雑把に言えば、家庭の負担の他に、学生自身が得る奨学金やアルバイトによる収入などを合わせて学生生活を過ごしています。
独立行政法人日本学生支援機構(以下、JASSO)が行っている「学生生活調査」から平均的な数字をご紹介します。もちろん、この調査の他にも様々な調査結果が公表されていますので、必要に応じてそういうものもご参考にされることをお勧めします。
最新の平成28年度学生生活調査によれば、大学の昼間部(以下断らない限り大学の昼間部の数字です)の学生の年間の学生生活費(学費+生活費)は約188万円でした。内訳は下の表のとおりです。
合計 | 約188万円 | 学費 | 約119万円 | 生活費 | 約69万円 |
学費:授業料、その他の学校納付金、修学費(教科書や参考図書等)、課外活動費、通学費
生活費:食費、住居・光熱費、保健衛生費、娯楽・し好費、その他の日常費
では、この費用をどのようにして賄っているのでしょうか。まず家庭の負担は約118万円でした。費用負担の内訳は下の表の通りです。
区分 | 合計 | 家庭から | 奨学金 | アルバイト | 定職・その他 |
金額 | 約197万円 | 約118万円 | 約39万円 | 約36万円 | 約4万円 |
この表から分かるように、平均的な姿としては、家庭は約6割(年間約118万円、4年間では4倍の約472万円)を負担しています※。言い換えると、残る4割は学生自身が奨学金などで収入を得ているということになります。
※以上の数字には、入学金など入学初年度のみ支払う納付金は含まれていません。また、授業料の減免を受けた場合には軽減後の金額が回答されています。
以上は、平均ですので、個々の学生や家庭によって具体的な金額は異なりますが、大体のイメージを持っていただけると思います。お子さんと進学についてお話をされるときの参考になれば幸いです。
3.〈在学中に必要となる経費(2)〉
自宅から通うと約167万円 下宿・アパートからだと約220万円 差は約53万円
自宅外の場合、学生寮という選択肢も
最新の平成28年度学生生活調査によれば、大学の昼間部(以下断らない限り大学の昼間部の数字です)の学生の年間の学生生活費(学費+生活費)は約188万円でした。内訳は下の表のとおりです。
合計 | 約188万円 | 学費 | 約119万円 | 生活費 | 約69万円 |
では、どこから大学に通っているかの違いはどうでしょうか。学生生活調査によれば次の表のようになります。
自宅 | 約167万円 | 学費 | 約125万円 | 生活費 | 約42万円 |
下宿・アパート | 約220万円 | 学費 | 約111万円 | 生活費 | 約110万円 |
自宅と下宿・アパートの差は全体では約53万円ですが、生活費で約68万円の差がついています。
この2つの間で大きく差が開くのは、やはり住居・光熱費です。自宅の場合ここが0円なのに対して、下宿・アパートは約47万円になります。食費も差がある費目です。自宅の場合が約10万円に対して下宿・アパートでは約28万円となっています。この2つで、約55万円の差になります。
ということは、住居・光熱費と食費を少なくすることができると、自宅外の大学等にも入学し易くなる(学校選択の幅が広がる)ということになります。しかし、最も注意を払うべき子供さんの安全や健康を損なっては意味がありません。通学時間の長短も要考慮です。
ここで下宿やアパート以外の方法としてあるのが、学生寮です。大学が直接運営していたり、借り上げたりしている学生寮、公益法人等が経営している学生寮があります。これらに入居している場合、住居・光熱費は約31万円、食費は約24万円となっています。下宿・アパートの場合に比べて、それぞれ約約16万円、約4万円少なくなっています。
全ての学校、全ての地域に学生寮があるわけではありませんが、文部科学省が留学生と日本人学生が一緒に暮らす学生寮の設置を推奨していることもあり、学生寮を新設したり、増設したりしている例を耳にすることがよくあります。
自宅からの通学が難しい学校に進学したいという希望がある場合、学生寮の利用を検討することも一つの案だと思われます。オープンキャンパスで調べる項目、子供さんと話し合われるときの材料などにされてはどうでしょうか。加えて、将来の自立した生活を考えると、自炊する力を身に付けさせるのも大事だと思われます。
4.〈在学中に必要となる経費(3)〉
東京の私立大? 京阪神や地方の国立大?
自宅通学で東京の私立大約185万円 地方の国立大に下宿・アパートで約171万円
東京への若者の集中が、日本全体の均衡ある発展の観点から取り組むべき課題とされています。平成30年6月1日、「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」が公布されました。今後10年間、大学等の設置者又は大学等を設置しようとする者は、特定地域内(※)の大学等の学部等の学生の収容定員を増加させてはならないこととなりました(※学生が既に相当程度集中している地域等として東京23区を政令で規定)。
この結果、東京圏の若者進学の機会がどうなるのかということも心配されています。地方の大学に進学した場合、費用はどれくらいかかるかということも心配です。
同じ条件で費用を比較した場合、自宅、学生寮、下宿・アパートの順で費用が高くなっていきます。ですから、東京の高校生が地方の大学に進学して、下宿・アパートを利用すると、自宅でなくなるので余計な費用が掛かる。例えば私立大学について住居別に費用を見ると次の表のようになります。
自宅 | 約176万円 | 学生寮 | 約222万円 | 下宿・アパート | 約249万円 |
自宅と下宿・アパートとの間で約73万円の差があります。
しかし、これに地域の要素を入れると変わってきます。
東京圏私立・自宅 | 約185万円 | 地方私立・学生寮 | 約238万円 | 地方私立下宿・アパート | 約239万円 |
差は54万円です。約19万円、差が小さくなりました。
これに、設置者の違いを加えるとどうなるでしょうか。
東京圏私立・自宅 | 約185万円 | 地方国立・学生寮 | 約129万円 | 地方国立下宿・アパート | 約171万円 |
地方に所在する国立大学に下宿・アパートから通学した場合の方が、東京の私立大学に自宅から通学するよりも約14万円少ないという結果が出ています。学生寮なら、約56万円少なくなります。
京阪神圏の国立大学に入学した場合は次の表のとおりです。
東京圏私立・自宅 | 約185万円 | 京阪神圏国立・学生寮 | 約151万円 | 京阪神圏国立下宿・アパート | 約192万円 |
どの大学で学ぶかということは、もちろん経費のみで判断すべきことではありません。しかし、支出が大きければ賄うことが難しくなり、その結果学業を続けることも難しくなります。支出を小さくすることも重要だと思います。自宅外から通うと高くつくと思いこまないことも、選択肢を広げ、適切な選択をするという点からは必要ではないでしょうか。
5.〈家庭は、大学教育に必要な経費をどのように賄っているか〉
2.で見た通り、入学後毎年必要となる経費を例にとると、必要額平均188万円に対して家庭は約118万円を負担し、残りは学生自身が奨学金やアルバイトなどで収入を得ていました。では、家庭はどのようにして賄っているのでしょうか。
日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査(平成29年)」※によりますと、教育費の捻出のために特に何もしていないと回答した家庭もあります(32.5%)※※が、多くの家庭では支出を減らす、収入を増やす、金融資産の取り崩し、そして割合は多くありませんが借り入れということをしていると思われます。
項目 | 具体的な捻出方法 | 割合 |
支出を減らす | 教育費以外の支出を削っている(節約) | 30.4% |
収入を増やす | 残業時間やパートで働く時間を増やすようにしている | 9.7% |
共稼ぎを始めた | 9.5% | |
親族から援助してもらっている | 6.6% | |
金融資産の取り崩し | 預貯金や保険などを取り崩している | 22.8% |
保護者の借り入れ | 国の教育ローン | 3.9% |
民間金融機関のローン | 2.7% | |
地方自治体または勤務先からの借り入れ | 0.5% |
「教育費以外の支出を削っている(節約)」の対象は、旅行・レジャー費、外食費、衣服の購入費、食費(外食費を除く)」などです。
「預貯金や保険などを取り崩している」世帯が22.8%で、これは節約30.4%に次いでいます。取り崩すためにはあらかじめ貯めることが必要になります。必要な費用を貯めるには、早期に貯め始めることが適当だと思います。早期に始めると期間が長くなるので、毎月に積立額が少額で済みます。
子供が大学に進学するのは、18歳になってからです。言い換えると生まれてから18年間の費用を準備する期間があります。もちろん、大学進学の前に保育所や幼稚園から小中学校、高校と教育費は必要となります。時々の支出と合わせて用意していくことになります。必要額の概算なども調べつつ、対応されることが適当だと思います。家計等の条件によっては、各種の奨学金、授業料の減免などの対象にありことがあります。準備をする余裕がなかった場合でも、気づいた時から少しでも準備を始め、各種の支援方策の利用を検討されてはいかがでしょうか。
※25歳以上64歳未満以下の男女、かつ高校生以上の子供を持つ保護者4700人(各都道府県100人)。うち子供が大学に在学している家庭はほぼ半分。
※※高校生以下の子どもしかいない家庭もあるため、大学生に限るとこの割合は下がり、何らかの捻出方法を取っている家庭は増えると思われる。
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進学や奨学金の返還について、プライバシー等を気にせず、安心して相談したり、必要な情報を得られる第三者機関が必要であることから、小林東京大学教授や遠藤日本学生支援機構理事長(東京都教育委員)等を発起人として、北原筑波大学元学長、梶山九州大学元学長及び馬城日本製紙株式会社社長、株式会社中村建築設計室社長等の教育関係や経済界の皆様からの賛同を得て、この法人は設立されました。(役職名は設立時)